松沢呉一のビバノン・ライフ

風俗嬢は同業の友だちができにくい—セックスワーカーの集まりで注意すべき点(上)-[ビバノン循環湯 448] (松沢呉一)-2,717文字-

「Twitter社会運動」の反省点—ネトウヨ春(夏)のBAN祭り[12]」に、風俗嬢の集まりをやる場合のトラブルとその対策について簡単に書きましたが、それについて詳細に書いた原稿が出てきましたので、循環しておきます

15年くらい前に書いたまま未発表になっていて、メルマガ読者限定のevernoteで初公開したものだと思います。

写真はネットから拾った古い写真です。

 

 

風俗嬢の友だちが作れない

 

vivanon_sentence「風俗嬢の友だちって作りにくいですよね」

取材で会った新人風俗嬢がそう言ってため息をついた。

彼女はこれが性風俗初体験で、何もかもがわからないことだらけで不安だらけだ。彼女はいろいろいと質問してくるのだが、私もすべてに答えられるわけではなく、仲のいい店じゃないと、その店固有の事情までは知らないことも多い。

風俗嬢が同業者の友だちを作りにくい事情は、拙著『風俗バンザイ』などでも詳しく説明したが、今は個室待機の店が多く、出勤時と退転時以外には同僚と顔を合わせないなんて話をよく聞く。

店としても情報が筒抜けになるため、女のコ同士が連絡を取り合うことを嫌うことがよくあって、暇な時間に他の個室を訪れることを禁止したり、携帯番号を教えることを禁止している。これでは友だちになりようもない。

しかし、実際にはこういう店でも横のつながりはある。

人妻風俗店の女性がこう言っていた。

「うちの店はみんな仲がいいですよ」

この店も横で連絡し合うことを禁止しているはずだ。

「そうですよ。でも、出勤の時に顔を合わせて、立ち話くらいはするじゃないですか。その中で話が合いそうな人に目をつけて、店を出た時に声をかけたんですよ。“よかったらお茶でも飲みませんか”って。それで仲良くなって、今は皆で連絡を取り合っていて、とくにその中の4、5人とは仲がよくて、皆で仕事のあとにご飯を食べに行ったりしてますよ。休みの日に連絡を取り合って買い物に行くのもいますし」

休みの日に買い物に行くくらい密なつきあいがあるのは少数派だと思うが、彼女らは最初から店の外でつきあいが始まっているので、店内・店外の間で線引きをしようもなく、とことん関係が深まるのかもしれない。

個室待機が主流になったのは「この世界で知り合いを作りたくない」という風俗嬢が増えたためでもあって、店の都合だけではない。両者の都合が合致した結果だ。したがって、こうやって声をかけたところで、相手に冷たくされることも多いだろう。こうもネットワークが広がったのは、夫のことやら子どものことなど共通した事情のある人妻店ならではではなかろうか。

Victorian Era addiction このアディクションはアヘンだと思います。

 

 

ラーメン屋で初めて友だちに

 

vivanon_sentence渋谷の性感ヘルスU店のナンバーワンであるEちゃんがヘルス嬢の友だちを初めて作ったきっかけはこんな具合。

「前から仕事のことを話せる友だちが欲しいと思っていたんですよ。仕事のあと、いつも一人で食事をするのも淋しい。ある時、一人でラーメンを食べながら、横にいる女のコたちの会話を聞いてたら、ヘルス嬢らしいんですよ。それで、“どこのお店ですか”って声をかけたところから友だちになった」

 

 

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