松沢呉一のビバノン・ライフ

「吉岡彌生 ナチス」で検索して上位に出てきたリテラの記事を批判する-(松沢呉一)3,362文字-

 

吉岡彌生 ナチス」で検索すると…

 

vivanon_sentenceここ数日、SEO対策として「ビバノン」の記事にタグづけをしているわけですけど、たとえば「吉岡彌生」でググると2万件ヒットしますから、何をどうしようと「ビバノン」の記事が上位に来ることは期待できません。

しかし、「吉岡彌生 ナチス」で検索すると、今現在でもトップページに「ビバノン」が入ってきます(これを書いている時点で、右のSSの下が「ビバノン」)。これは喜べることではありません。

「ビバノン」の吉岡彌生関連の記事はしょっぱなからコケていて、各記事のPVが3桁に達するかどうかって程度のアクセスですよ(ちょっとずつは増えているので、時間差で3桁には達するでしょうけど、公開してから24時間の段階では全回2桁でした)。電車の中で読み上げた方がもっと多くの人に届きそうです。

検索結果に出てくる記事には「含まれない ナチス」になっているものや吉岡彌生とは関係のないところでナチスが出ているものもあって、いかに吉岡彌生の思想は知られていないのかってことです。

女子医とその関連サイトの美化戦略が見事成功しています。現状の大学をどう評価するのかにおいて、それが継続されていない限り、創立者の思想や姿勢までを持ち出す必要はないのですけど、であるがゆえに歴史は正確に記述すべきで、その上で批判するところは批判し、反省すべき点は反省すればいい。創立者を美化することなく、軽く触れるに留めるのであれば、ネガティブな部分までをことさらに出す必要もないでしょうけど、都合の悪いことを伏せて美化するのはよくない。

それにしたって、国会図書館が公開している資料をうちにいながらにして無料で読める時代なんだから、もうちょっと調べる人がいてもいいのですけど、そこまで知りたいと思う人は少ないからこういうことになっていて、だとすっと「ビバノン」のような記事を読みたがる人もいないってことです。絶望しないではいられない。

 

 

高須克弥を批判するために吉岡彌生を持ち出すリテラ

 

vivanon_sentence吉岡彌生 ナチス」で検索して二番目に出てくるのはリテラの以下の記事。

 

 

 

 

この記事も吉岡彌生がナチスを礼讃していたことに触れているのではなく、「高須院長が今度はナチス医学を評価! 障害者を抹殺していたのに…マスコミはなぜ高須院長の言動を報道しないのか」という過去記事のタイトルでナチスがひっかかっただけです。ナチス医学を評価した高須克弥を批判するために持ち出した吉岡彌生はナチスを高須克弥以上に高く評価していたというオチ。コントか。

済生学舎が女子の受け入れをやめたことが女医学校設立のきっかけだったのは事実ですけど、吉岡彌生は国家主義の見地から大陸や南方支配のために送り込む人材養成として設立したとも言っているのですから、「マスコミはなぜ高須院長の言動を報道しないのか」と憤るなら、「吉岡彌生のアジア侵略肯定、ナチス礼讃にまでなぜ踏み込まないのか」ってことになりましょう。

即製記事の多いリテラですから、そこまでは調べていないのでしょうけど、Wikipediaにも公職追放されたことは出ているんだから、「なんでだ?」とちょっとは疑問を持てばいいのに。

それでも吉岡彌生は、女は男と同様に国家に奉ずることができるし、戦争に参加することもできるという考え方を持ち、古い良妻賢母の考えを否定していたのですから(新しい良妻賢母を提唱)、機会均等の文脈で出すのは矛盾はないと言えます。

だとしても、この記事の論旨はおかしい。「だから、女子医は存在していいが、男子医大は存在してはいけない」というのはおかしい。

すでに書いたように、私自身、女子医がある以上、同エリアでその数を越えない限りにおいて、男子の定員を多くする医大はあっていいと思ってます(本来は男子と女子をどう受け入れるのかは学校の裁量範囲であって、受験生にその旨を伝えている限りはとやかく言うことではないという考えですが、さすがにある地域、ある専門分野で見た時に、男子の選択肢の方が多いのは好ましくはないでしょう)。

 

 

リテラの記事のおかしさ

 

vivanon_sentenceこの辺については「男女別学は容認されていい性差別—男女別学は差別か?[6]」に書いた通りです。「この社会が容認してきた性差別があって、男女別学はそのひとつである」という考え方を受け入れられない人たちもいるでしょうが、そう考えないと破綻が生じます。その破綻に気づいていないとすれば突き詰めていないからです。

以下も「男女別学」について書いてきたことの繰り返しですが、ざっとリテラの記事のおかしさをまとめておきます。

 

 

next_vivanon

(残り 1522文字/全文: 3475文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ