松沢呉一のビバノン・ライフ

性感染症(STD)についての相談—セックスにくっついてくる厄介なもの[上][ビバノン循環湯 459] (松沢呉一)-3,753文字-

毎年9月28日は世界避妊デー—心のナチスも心の大日本帝国も抑えろ[3]」に書いた性感染症対策についての考え方をもっとわかりやすく書いたものがあったはずだと思って探しました。何も記録を残していないのですけど、おそらくこの原稿は20年近く前にネットに出したものだと思われます。淋菌で金玉が腫れた故カネヤマシンも登場。

このシリーズでは、病気に関する著作権切れの図版を集めてみました。梅毒(syphilis)が多いのですが、性感染症とは関係がないものも含まれています。先に言っておきますが、皮膚に潰瘍ができている図版や顔の一部が欠落している図版が苦手な人は読み進まないようにお願いしておきます。

 

 

 

イメクラ嬢からの相談電話

 

vivanon_sentence知人から、また読者から、性感染症(STD)についての相談がよく寄せられる。私の著書の中で繰り返し説明していて、ほとんどの場合は、そこに書いてあることを読んでくれればいいだけなのに、皆さん、いざ自分が感染しないと、真剣に読む気がしないらしい。

仕事であっても、プライベートであっても、エロ行為をする以上、感染するリスクは完全にゼロにはならない。オナニーの見せっこなら感染しないけど、そんなことだけをしている人はまずいない以上、正しい知識を得て、そのリスクを軽減するなり、いざ感染した時の準備をしておくなりして欲しいものである。

取材旅行で東京を離れている時に、一度しか会ったことのないイメクラ嬢からの電話があった。

「私のお客さんが、どうもヘンだというので、病院に行ったら、淋病だったらしいんですよ。それで私にも感染させたかもしれないので、病院に行った方がいいって言うんです。いい病院あったら、紹介して欲しいんですけど」

「うむ、いい客だな」

彼女のことを心配するより先に客を褒めたのは失敗かもしれないが、感染したことを彼女に知らせてくれるのはいい客だ。さまざまな客を相手にしているのだから、仮に彼女が感染したところで出所はわからないわけで、それでも知らせるのは彼女のことを考えているためである。そもそも彼女が感染源かもしれないのだから、やんわりとそれを伝えた可能性もあり、これも責めるわけではなく、彼女に検査して欲しいがためである。

こういうことを堂々伝えられる人は信用できる。この客と私はセックスしたい。

ca. 1884, [photograph exhibiting a neurological exam with an electrical device], Charles Lanier

 

 

検査のある店・検査のない店の大きな違い

 

vivanon_sentenceたいていのソープランドでは、性感染症の定期検診を義務づけているが、それ以外の性風俗ジャンルとなると、病気の対策をしっかりやっているのは少数派だろう。

京都はヘルスの組合があって、組合参加のヘルスは血液検査を徹底しているし、老舗のクリスタル系列や東京や横浜を拠点としたハレンチ・グループも同様。また、マキシム・グループのように粘膜で検査をするキットを使っている系列もあるが(※これらの系列店が現在どうしているかは不明)、多数派のヘルスではノーガード戦法である。

女のコらが病気の知識を得てしまうと、怖くなって仕事を辞めてしまいかねないと恐れ、医者を呼ぶのも面倒だとして、病気なんて存在しないことにしている店が多いのである。

病気の知識を得ると店を辞めてしまうという店の考えはかなりまで誤解である。中途半端な知識を得るとそうなる可能性もありつつ、正しい知識を得て、予防や早期発見ができるようにした方が女のコたちは店を信頼する。事実、しっかり対策をしている店は流行っているし、女のコが定着しやすい。

性感染症の話を避けたがるエロ本もある中、そういう話をよく書いている私にも読者が定着しやすいのも同じだ。たいした数じゃないけどな。

しっかりと対策をとっている店にいるコらから「他の店には怖くて行けない」という話もよく聞く。現に経営者や従業員たちも、STDに関する知識が皆無であることが珍しくない。ウミを出しながら何ヶ月も放置して、他店に遊びに行っていた従業員も存在する。困ったもんである。

こんな店では、せいぜいのところ、「異常があったら病院に行け」というくらいで、安心していける病院を紹介してくれるわけでもないから、女のコらが検査をしたくても、どうしていいのかわからない。

 

 

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