松沢呉一のビバノン・ライフ

手荷物の方が安全—禁制品を持ち込むには[上]-[ビバノン循環湯 467] (松沢呉一) -2,722文字-

すんごい古い原稿。1992年に書いて翌年ミニコミ「ショートカット」に掲載したもの。「書かないで」と言われて聞いた話ですが、同僚が見てさえ個人を特定できないように細心の注意を払った上で、300部のミニコミならいいだろうと書いたものです。

時間が経っていて、さらにどこの誰か特定できなくなっていますから、循環してもいいでしょう。私自身、彼女にはこの時にしか会っておらず、名前も知らないので、今から探せと言われても困難です。

この話の最大の盛り上がりである「自身のセックスを記録したビデオテープを持ち込もうとしてバレたスチュワーデス」の話は彼女は噂話として聞いたことにしてありますが、本当はもっとリアルで、ここに書いていることは大筋間違いないです。20年経って、私自身がどこの誰から聞いたかわからなくなっても、正確なことはなお書かない程度には口が堅いので、安心して秘密を私に語るといいと思います。

なにしろ古いので、ここに書いたこととは状況が違っている部分もあるため、これを参考にして禁制品を持ち込もうとしないように。最後に書いた私自身の実体験は確実に有効だと思いますけどね。

 

 

マイボールにコカインを入れるのはやめましょう

 

vivanon_sentenceTBS「ニュース23」でボウリングのボウルにコカインを入れて密輸入しようとした外国人が逮捕されたというニュースをやっていた。観ている段階では原稿にしようとは思っていなかったのでメモしなかったのだが、南米のどっかの国からだったと思う。

もうちょっと考えろよな。プロボウラー以外で、マイボールを持って日本に来るヤツはいないだろ。事実、税関は、それを不審に思って調べたのだ。このバカで憎めぬ男を笑っているうち、以前聞いた話を思い出した。

あるパーティで、たまたま隣の席に座った女性が航空関係者だった。ありきたりの挨拶めいたことを話しているうちに、税関の話題になった。あちらは私が物書きであることをちょっとは知っていて、「絶対にこのことを書かないで下さいね」との前置きのあと、人によっては非常に役に立つ話をしてくれた。要するに、どうやったらバレずに禁制品を持ち込めるかである。

私はこれまでにそのようなものを持ち込んだことはほとんどない。チンコやマンコが写っているビデオや写真集を持って帰ったことは何度かあるが、たまたまそういうものが写っているだけであって、あえてチンコやマンコの写真を持ち込もうとしたわけではない。

ポルノ雑誌の一冊、マリファナの一グラムとて持ち込んだことはないし、今後だって、あえてやろうという気はない。我々のような仕事をやっている人間としては清く正しい部類に入るだろう。

でも、本当は清く正しいのではなく、小心だからである。緊張してボロを出しそうな気がする。係員の前で足がすくみ、手がブルブル震え出し、辛抱たまらず、「すいませんでしたぁ、私がやりました」と自ら謝ってしまいそうな気がしてならないのだ。

したがって、実用的な意味で彼女に話を聞いたわけでなく、あくまで話のネタである。これを実践してパクられても私は知らない。まっ、そういうことをやっている人たちなら、どうせ知っているようなことだろうしな。

AMERICAN AIRLINES STEWARDESS

 

 

禁制品を持ち込むなら手荷物で

 

vivanon_sentenceまずブツを入れる荷物はどれがいいかだ。手荷物はX線を通すので、預ける荷物の方が安全かと私は思っていたが、彼女は手荷物の方がはるかに安全だという。というのも、預けた荷物は麻薬犬が調べているそうなのだ。麻薬犬は貨物関係だけを調べていると思っていたが、そうではないらしい。

 

 

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