松沢呉一のビバノン・ライフ

めんたねさんのヘイト・francesco3さんのヘイト—「ヘイト」の意味を巡る対立[3]-(松沢呉一)-3,359文字-

「ヘイト」の意味を巡る対立—言葉を理解できていないのはどちらか」に対する野間易通から批判があり、その合意に達した部分についての報告は「ヘイトなきところにヘイトを持ち込んだ「カウンター勢力」—「ヘイト」の意味を巡る対立[2]」。

今回は「新宿ベルク炎上騒動」における「ヘイト」という言葉についてで、こちらは合意するところは最後までありませんでしたので、私の考えを再度確認するに留めます。

これについては、野間易通とは別に、にゃにゃこ@愚者さんとのやりとりを同時進行していました。彼女に確認したいことがあって連絡をしたのではなく、当初、同じFacebookのグループでこちらも議論を進める予定だったため、いったんは彼女をグループに招待していたのですが、複数のテーマを同じ場で進めると混乱するため、にゃにゃこさんはメンバーから外しました。

メッセージでその説明をしたのを契機に、改めて確認したことがあります。理解していたことの深度みたいなものは違っていましたし(彼女の方がこの件についてはうんと詳しい)、他のことについては意見が合わないところがありそうですが、この「ヘイト」についての考え方についてはおおむね合致しており、以下には彼女に教えてもらったことも反映されています。

なお、「新宿ベルク炎上騒動」については、ベルク批判派の肩を持つ気はまったくありません。ここでの私の興味はただただ言葉の問題。是々非々でいきましょう。

 

 

 

francesco3さんの「ヘイト」

 

vivanon_sentence新宿ベルク炎上騒動」での「ヘイト」に関する議論は、この騒動自体の発端でもあるfrancesco3さんのツイートが始まり。

francesco3さんが「ヘイト」という言葉を使ったツイートはTogetterで見ていたのですけど、そのツイートは「差別」という意味にとらえることも可能かもしれないですが、広く「悪意」「敵意」といったニュアンスだろうと受け取ってました。

「ヘイト」の意味を巡る対立—言葉を理解できていないのはどちらか」を書く際に、francesco3さんのTLも見ましたが、印象は変わらず。

以下はこの騒動が始まった9月10日のツイート。

 

 

 

「客のツイートを探し出して、わざわざベルク店長が敵意を向けてきた」と彼女は受け取ったのだと私は理解。その受け取り方が正しかったかどうかはここではどうでもいいので飛ばします。

 

 

めんたねさんの「ヘイト」

 

vivanon_sentencefrancesco3さんの「ヘイト」は、差別の意味で使っているわけではないという意見に対して、2016年のfrancesco3さんのツイートが持ち出され、francesco3さんはつねに「ヘイトは差別である」という考え方をしているのだから、ベルクの件で使用された「ヘイト」は差別の意味でしかないという反論がなされます。

これはどういう経緯で出てきたのかを最初から確認しましょう。

以下のめんたねさんの一連のツイートが始まりです。

 

 

 

 

これに対してfrancesco3さんが批判を開始します。

 

 

 

めんたねさんの一連のツイートはフェミニズム内の路線の違いを発端にしつつ、怒りを動機にする行動に関する持論を述べていて、その流れからすると、めんたねさんの使っている「ヘイト」は「差別」に限定されません。怒りが差別という出方をすることはあれども、該当しない差別もありますから、「差別」とすると論旨からズレます。

そのことはこれをまとめためんたねさん自身が「感情貯金が少ない人は理不尽なヘイトを他者に向けて心を守る」というタイトルをつけていることでもわかります。

しかし、にゃにゃこさんは、めんたねさんのツイートを見て、差別の意味だと受け取っていたそうです。私が説明をして納得してましたが、そう解釈してしまうのは理解できます。私がすぐに判断できたのは、めんたねさんと面識があって、彼の論を少しは知っているってことも関係しているかもしれず、それを知らないと、わかりにくいかもしれない。

彼はカウンセラーであり、その立場からの言及であって、差別に限定してヘイトを使う必然性がないのです。

したがって、francesco3さんが誤解していると思うのですが、ここではfrancesco3さんの主観がどうだったかだけが問題ですので、その検討は飛ばします。また、めんたねさんの論の内容についての検討も飛ばします。

 

 

こっちのヘイトとあっちのヘイト

 

vivanon_sentenceその上で彼女はこう言ってます。

 

 

 

もひとつ。

 

彼女はヘイトにはいろんな意味があることを踏まえて、「この文脈では差別」「今ここでは差別の意味」と念押ししているに過ぎず、「ヘイトはつねに差別だ」なんてことは言ってないわけです。

 

 

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