スチュワーデスとエロビデオ—禁制品を持ち込むには[中]-[ビバノン循環湯 469] (松沢呉一) -3,269文字-
「手荷物の方が安全—禁制品を持ち込むには[上]」の続きです。
禁制品を持ち込む時はネクタイをしよう
今まで二回ほど、「ヘンなもの持っていないよね」とか「麻薬は大丈夫だよね」と聞かれ、「持っていないですよ」と答え、ほとんど荷物を調べられなかったこともある。「持ってます」と答える正直者がいるとも思えないから、あれで反応を見ているのだろう。私がもし本当に持っていて、あんなことを急に聞かれたら、急に愛想がよくなって、「いやあ、お仕事、大変ですねえ。景気はどうですか?」なんてことを言いそうな気もする。
やたら饒舌になるのは怪しいと彼女も言う。
「以前、うちの会社の人に聞いた話では、若い係官の方が、まだ仕事に燃えているので、一所懸命調べるみたいですね」
年配の方が厳しそうな気もするが、どこの世界でも十年同じ仕事をすれば仕事に対する諦念も出て来て、楽して仕事をこなすようになるものだ。
「ネクタイをピシッと締めたビジネスマンはだいたいチェックが甘くて、ヒッピーみたいな格好をしていると厳しいって言われますね。麻薬犬がチェックできる荷物の数に限りがあるように、人間も同じですよ。全員を念入りにチェックしていたら業務がストップしてしまいますから、まず見た目でチェックする。そのときに、確率からすると、やっていそうにない人の方がやっていない率が事実高いってことでしょう。プロですから、歩き方やしゃべり方、目線、表情で、見抜くこともあるそうです。気の弱い人はやらないに越したことはないですよ」
やりません。
「飛行機の乗務員だともっと持ち込みやすいんじゃないですか」と私は彼女に聞いた。
「そうかもしれないですね。見たことがあるかもしれませんが、乗務員も一応チェックされるんですよ」
そういえばスチュワーデスは端の方のカウンターに並んでいた記憶がある。
「でも、まずそんなことをしないだろうということで、ほとんどノーチェックです」
「実際にしないんですか」
「と思いますよ。だって、もし見つかったとしたら、間違いなくクビです。ニュースとしては会社がもみ消すかもしれませんけど、どっちにしてもクビは間違いないですからねえ。ポルノや麻薬を少々持ち込んだところで、たいしたお金になるわけじゃないんだから、そんなことで一生を棒に振る人なんていないでしょ」
考えてみると、最初からスチュワーデスやパイロットがそんなことをわざわざする必要もない。頻繁に海外に行ってるんだから、ポルノを見たけりゃ向こうで見ればいい。ドラッグだって同じことだ。
「さすがにパイロットでドラッグをやっている人はいないと思いますが、スチュワーデスだとあっちでマリファナくらいやっているのはいるでしょうね」
そりゃいるだろう。どんな集団でも品行方正なのばかりってことはなく、しかもストレスが溜まる仕事なので、パイロットでもマリファナくらいはやっているのがいそうだ。
しかし、彼女自身はそういうことをしないような口ぶりで、どうもそれは本当のようである。
エロビデオを持ち込もうとしてバレたスチュワーデス
彼女はまた「絶対に書かないでくださいよ」と念を押して、以下の話を教えてくれた。
「でも、噂ではいろいろと聞きます。あるスチュワーデスがビデオテープを調べられたらしい。普通はビデオがあったくらいじゃ税関は調べないものですけど、何かよっぽど怪しいところがあったのか、係員の機嫌が悪かったんでしょうね。それで別室に連れていかれて、ビデオをデッキにかけられてしまったそうです」
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