失われた記憶を取り戻すための対話—彼女は美しかった(中)-[ビバノン循環湯 475]-(松沢呉一)-3,273文字-
「本にならなかった原稿—彼女は美しかった(上)」の続きです。
彼女と彼氏との対面
ある時、私はその街について取材することになって、彼女に問い合わせをした。地元の人じゃないとわかりにくネタなのだ。しかし、その地に住んでいる彼女でも詳しいことはわからず、「彼氏が知っていると思うので、案内させますよ」ということになって、私はその地に向かった。
ホテルを決めてから、事前に聞いていた彼女の携帯に電話し、そこに彼女と彼氏がやってくることになった。私は約束時間の少し前に、ロビーに降りて彼らを待った。やがて男女が入ってきたのだが、これではあるまい。そう思ったのだが、女の方が声をかけてきた。
なぜ私が違うと思ったのかと言えば、美少女ではなかったのだ。あの写真とは似ても似つかない体型であった。横幅があるし、顔も違う。
なぜそうも変わってしまったのかは、そのあと彼らと食事に行った際に本人が教えてくれた。
彼女はやはり体が悪く、ここわずか二年くらいで激太りしたそうだ。しかし、その時に見た限りでは表情も話し方も陽気で、元気そうだった。
見た目は違ったけれど、話をしていくうちに目の前の彼女と『ワタシのシゴト』に送られてきた原稿の彼女とが少しずつ重なっていった。
彼氏に情報をもらい、このあと私は取材に出て、一夜にして無事取材は終了した。彼の情報がなかったら、こうもスムーズにはいかなかったろう。
それから半年ほど経ったろうか。彼女の様子が今まで以上におかしい。SNSではすぐにでも死んでしまいそうなことを書いている。心配になってメールをしても返事がない。
原稿の印象と会った印象がなんとか合致したのに、今の彼女はそれともあまりに違っていた。
※自動彩色です。女児用セーラー服ですが、オシャレ。
死ぬしか選択肢がない
たまたまその地にまた行く機会があったので、私は彼氏と連絡をとった。彼女の様子を知ろうと思ったのだ。
待ち合わせ場所に彼は一人でやってきた。思っていた以上に話は深刻だった。
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