松沢呉一のビバノン・ライフ

レニ・リーフェンシュタール制作「Olympia」を観る—日本におけるヒトラーの評価[1](松沢呉一)-2,772文字-

偶然にも菜食主義で禁酒・禁煙—ヘンリー・フォードとナチス[4]」からゆるくつながってますが、ナチスはあまりに途方もないテーマで、新参者が一夜漬けで全体をまとめていくことは困難です。わかったところから断片的に進めていきます。今回の「日本におけるヒトラーの評価」もまたほんの一部しか目を通しておらず、なお全体は理解できていないので、両極のふたつ(+α)の資料を見ていくだけであることを予めお断りしておきます。ナチス登場以前からあった反ユダヤの潮流は日本でも紹介されていたのですが、これについても深入りしないでおきます。

 

 

 

レニ・リーフェンシュタールの映画「Olympia」

 

vivanon_sentenceつい魔が差してヒトラーの『我が闘争』を読んだことから始まって、国会図書館のサイトで関連書を読み、本屋に行ってめぼしいナチスやヒトラーに関するものを購入して読む一方、レニ・リーフェンシュタール制作のナチス・プロパガンダ映像も一通り見ました。

 

 

 

 

世界大戦直前の1936年に開催されたベルリン・オリンピックのドキュメンタリー映画「Olympia」のこと、それがナチスのプロパガンダ映画であること、「NUBA」で復活したリーフェンシュタールのことは知ってましたけど、観たのはこれが初めてです。ヒトラー関連、ナチス関連のものを遠ざけてきたのと同じ理由で、観ようとも思ってませんでした。

オリンピックの映像として観ると、どうしても記録が気になってしまって、今現在の各競技の記録を調べ、「この頃はたいしたことないな。現在の日本のトップクラスの中高校生ならメダルを狙える」なんて思ってしまうのですが、ベルリン・オリンピックの頃にこの映像は他に類を見ないものだったでしょう。そもそもオリンピックをドキュメンタリー映画にしたのはこれが始まりらしいですし。

さらにはオリンピックの映画なのに、やたらとヒトラーが登場し、しっかりナチスの宣伝映画になっていることには呆れるやら感心するやら。ゲッベルスは宣伝効果や諸外国からの批判を考えて、宣伝色を抑えるように指示したらしいですけど、十分宣伝臭い。冒頭のオリンピック・イメージのシーンから聖火リレー(これもベルリン・オリンピックが初)を経て現実のスタジアムに着いて間もなくナチス式の敬礼です。

※ドイツ選手が登場して興奮するヒトラー。ヒトラーは多動症か? 落ち着きがないのです。自分を見るよう。苛つく様子を見て、「おっぱいプルンプルン」と言いそうだと思いました。

 

 

ヒトラー・ハーケンクロイツ・敬礼

 

vivanon_sentenceナチスが選挙で勝利し、全権委任法ができて独裁体制が樹立されたのは1933年。国旗としてナチスのマークであるハーケンクロイツが採用されて、映画の中でもいたるところでハーケンクロイツが登場します。

観客に依頼なり指導なりがあったのではないかと思うのですが、ヒトラーに対して、あるいはドイツに対してナチス式敬礼を会場全体がやる。依頼なんてしなくても、この頃のドイツ国民は望んで敬礼くらいするかもしれないですが、イタリア、オーストリアなど、親ドイツの国々の選手も入場行進でナチス式敬礼をやる。

ナチスのオリンピックということでボイコットの動きもあって、それを配慮してユダヤ追放政策をナチスはゆるめていたとは言え、また、それをやっているのは友好国とは言え、なんてことをするのかと。

と感じるのはその後のナチスを知っていて、ヒトラーに、ナチスに、ハーケンクロイツに、あの敬礼に嫌悪感を自動的に抱いてしまうからであって、当時、ドイツ国民はヒトラーやナチスに熱狂と言える支持をしていたのですから、主催国の流儀を取り入れるってもんです。

 

 

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