マーク・ザッカーバーグを支持する—ポグロムから学んだこと[1](松沢呉一)
「ポグロムとホロコースト—日本におけるヒトラーの評価[3]」あたりからゆるく続いています。
Facebookはホロコースト否定論を削除しない
もう忘れている人が多いかと思いますが、昨夏、Facebookのマーク・ザッカーバーグがホロコースト否定論を削除しないと発言して叩かれていたじゃないですか。
【7月20日 AFP】交流サイト(SNS)最大手フェイスブック(Facebook)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)最高経営責任者(CEO)が、ホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)を否定する投稿をフェイスブックから排除すべきでないと述べたことを受け、同社が新たな論争に巻き込まれている。
ザッカーバーグ氏の発言は激しい批判を呼び、サイト上でのヘイトスピーチ(憎悪表現)や暴力的コンテンツ、虚偽情報の根絶を目指す同社の取り組みを損なう形となった。
同氏は18日、ITニュースサイト「リコード(Recode)」とのインタビューで、フェイスブックは偽ニュースの拡散阻止に努めているが、ホロコースト否定論者や陰謀論サイト「インフォウォーズ(Infowars)」からの投稿を含め、事実に誤りがあるというだけで投稿を排除することはないと表明した。
同氏は自身がユダヤ系であることに触れた上で、「ホロコーストが起こったことを否定する人々もいる。とても不愉快だ。それでも結局は、別の人々が思い違いをしていると私が考えるからといって、私たちのプラットフォームがそれを削除すべきだとは思わない。彼らが意図的に思い違いをしているとは考えない」と述べた。
ザッカーバーグ氏の発言に対しては即座に、憎悪や暴力を誘発しかねないとの批判の声が上がった。
ユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Center)」のアブラハム・クーパー(Abraham Cooper)氏は、「ホロコーストの否定は典型的な『偽ニュース』だ」と指摘。
クーパー氏は「ナチスのホロコーストは史上最も多く記録された残虐行為であり、フェイスブックなどのソーシャルメディア・プラットフォームでホロコーストを否定する虚偽情報の投稿を認めることは、『自由な意見交換』の名の下に正当化できるものではない」と述べた。(c)By Rob Lever, with Glenn Chapman in San Francisco
ザッカーバーグの言うことを十分に理解します。これもそのうち取り上げますが、ザッカーバーグを批判する人たちを批判する記事も出てましたから、私が触れるまでもないと思い、私は何も反応せず。
しかし、半年経って、このことは改めて私なりの切口で取り上げておいた方がいいと思い直しました。これはヒトラーやナチス関連の本を多数読んだがゆえです。
サッガーバーグの姿勢も『我が闘争』の復刊も支持する
サイモン・ウィーゼンタール・センターのコメントは「削除しないこと」と「認めること」をごっちゃにしています。削除しないのは判断しないということあって、その内容を認めることではないのはザッカーバーグが説明している通り。
たとえば政府が「フェイクニュース防止のために検閲をする」と言い出したらメディアのほとんどは反対するでしょうが、それをもってフェイクニュースを認めることとは言えない。削除をしないことはその内容を支持することとは無関係です。
Facebookという空間の中では、運営は絶対的な権力を持つ。そこにいる人の存在を消すこともできます。その権力者が「正しい」「正しくない」を判定して、言葉を消すことの怖さをどうしてわからんのでありましょうか。
「こんな言論はなきものにしてしまえ」という発想は、たとえばヒトラーの『我が闘争』も出版を禁じるべしというところに至り、事実、サイモン・ウィーゼンタール・センターは、『我が闘争』の復刊にも反対してきました。これも私は批判します。
あれを読んだから私は今まで気づけていなかったことに気づけたのです。ドイツ国民は騙されていたのではなく、『我が闘争』に書かれたことをわかりながら信任した。問題はヒトラーだけにあるのではない。ナチスだけにあるのではないのだと。
(残り 1147文字/全文: 2984文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ