話はできるが、会話はできないタイプ—風俗店のストーカー(中)[ビバノン循環湯 493] (松沢呉一)
「拳銃を持っていたストーカー—風俗店のストーカー(上)」の続きです。
オレの気持ちがわかれば好きになってくれるはず
前々から書いているが、私は偏執傾向がありつつも、女性に対しては、その性質が発揮されず、ふられたところですぐに諦める。なので、ストーカーの心理はイマイチわからないのだが、たまに「これがひどくなるとストーカーになるのか」と思うことがある。
私は疑い深い風俗嬢に弱い。たとえばこんな風俗嬢。
「××ちゃんはかわいいなあ」
「かわいくないですよ。もっとかわいいコたちとたくさん遊んでいるでしょ」
「んなことないってば。単にかわいいコだったらたくさんいるけど、性格や相性を含めて気に入っちゃったよ」
「またまた。みんなに言っているくせに」
「イヤ、ホントだよ。君みたいなタイプが大好きなんだよ」
「ウソばっかり。そういうセリフを今まで何人に言ってきたんですか」
「うーんと、ここ三年では一人かな」
「この三日では一人の間違いでしょ」
「いや、今月では一人かな」
「やっぱり。今日はまだ三日だよ」
「しまった」
こんなコである。こういう疑り深いコに会うと、「オレの気持ちをわからせないでは済まない」って気になる。つっても「オレの気持ち」ってもの自体がいい加減なので、わからせたところでどうってことはないが、ストーカータイプの人は「オレの気持ちがわかれば、あのコはオレのことを好きになるに違いない」とまで思うのではなかろうか。
ストーカーの心理をわかろうとしなくていいのだけれど、そう無理をしなくても、「ストーカーのそこはちょっと気持ちがわかるぞ」という話を聞いた。
※Super Creepy Halloween photo from the 1940s この手の写真はたいていハロウィン
四十代独身が怖い
家に侵入されるほどの話はなかなかないが、それなりの期間、風俗嬢をやっていると、ひとつ間違うとこういう客に発展しかねないような相手に出会った経験があったりするものだ。こういう相手に出会ってしまったら、いち早く手を打った方がいいみたい。出入り禁止にしたり、「来ないで欲しい」ってはっきり言ったり。あんまりはっきり言うと、それで逆ギレしたりもするみたいだが。
ただし、初日からおかしい人もいるので、早く対処しようがないこともある。
大久保のイメクラで会った風俗嬢と、「怖い客」の話になった。
「若い客はすぐに勘違いするのが多いって言いますけど、若い客は恋愛経験が少なくて、だんだんその気になってくることが多いので、こっちがそれをコントロールしたり、ある一線を越えそうになったところで諭したりできるんだけど、怖いのは四十代独身組ですよ」
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