松沢呉一のビバノン・ライフ

七年ぶりのマグロ・オーガズム—エロい人助け(3)[ビバノン循環湯 499] (松沢呉一)

子どもができにくい複合的な理由—エロい人助け(2)」の続きです。

 

 

 

年齢にともなった言葉

 

vivanon_sentenceしばらくして客として彼女に会いに行くことにして、その旨メールをしたら、彼女はこんな返事を寄越した。

「ホントですか。嬉しいです。必ず店に電話を入れて予約してくださいね」

ふだんだったら気に留めないところだが、彼女の欠点をわかっているだけに、その欠点がメールにも出てしまっていると思った。

事前に電話をしないでフラリと遊びに行って彼女を指名しても、写真指名にしかならず、本指名にカウントされないため、こう書いたのだろう。

一本でも本指名を増やしたいのはわかるが、まだ馴染んでいるわけでもない相手に、こういう露骨なことは書かない方がいいのに。客の気持ちが本当に彼女はよくわかっていない。そんなことを言われなくても予約するつもりだった客は冷める。

確実に本指名にしたいのなら、「ホントですか。嬉しいです。私の方から店に言っておきますね」とするのがもっともスムーズだ。客と直接連絡をとりあうことを禁止している店だとこれはできないが、彼女のいる店はうるさくないはずで、たぶん彼女はこういう場合にどうするのがもっともスムーズなのかを考えたこともないのだろう。

若いうちに、人気有名店で、ルックスのよさだけで稼げていたのが悪かったのかもしれないが、彼女はもともと人と人、男と女の細かな機微を理解しておらず、理解する気もない。このことを彼女に教えても、なぜそうした方がいいのかがわからないのではなかろうか。

はっきりとした性格は彼女のよさではあるのだが、そのよさは他の要素が伴わないと生きない。かつては「あっけらかんとしたギャル」という要素があったのだが、すでにそれをなくした現在、このままでは指名には決してつながるまい。彼女が指名をとれないのは間違いなく彼女自身に原因がある。

The style of the 1920s, rolled stockings.

 

 

相手を受け入れていないセックス

 

vivanon_sentenceその当日、彼女は本当に喜んでくれていたのだが、この日の彼女も、やはり色気のかけらもない。

「あのさ、今日はオレは客でしょ。もうちょっと一緒になって盛り上げるとか、雰囲気作りをするとか、協力的になっていただかないと。ウソでいいんだからさ」

そう言って抱き締めたら、抵抗はしないのだが、体は開かれてない。気持ちがしっかりガードしている。それが恒常化しているから、ガードしているとの自覚も彼女にはない。

手を握っても同じ。何も伝わってこない。人によってはこれだけでジッと汗ばんできて、以心伝心状態になる。本当に以心伝心状態なのかどうかはわからないけれど、そうかもしれないという反応をしてくる。そういうことが何もない。

前回は初対面で取材のために緊張していただけではないかとの思いもあったのだが、関係なかったようだ。こういう人なのだ。

服を脱がそうとしたら、ここでは「待って待って」と抵抗。

「もっと指名を増やしたいんでしょ。子どもも欲しいんでしょ。我慢しろって」

「無理ですよ。こんなんだったら、本番した方がまだ楽」

「バカもん、こんな色気のない女じゃしたくならないって」

「ひっどい」

「ひどいのはそっちだ。客から高い金をとる以上、少しは客に合わせるようにしないとさ」

 

 

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