松沢呉一のビバノン・ライフ

その日のうちにまた来て欲しいと言い出した—ススキノで出会ったソープ嬢[上]-[ビバノン循環湯 503](松沢呉一)

1999年にどっかの連載に書いたもの。この原稿はとっくに循環したと思っていたのですが、勘違いみたい。雑誌に出した内容もまあまあ面白いのですが、後日談があって、そっちがまた面白い。後日談を追記しておきました。

写真はすべてGoogleストリートビューから、ススキノのソープランドです。

 

 

 

旅先でのソープランド

 

vivanon_sentence旅は楽しい。繰り返し足を運んで馴染みになり、心を通じ合わせるのが風俗の醍醐味と考える人の中には、「地元以外の場所で遊んで気に入ったのがいたとしても、通うことができないのでつまらない」という人もいる。一理あるが、出張で繰り返しその街に行くのであれば、馴染みにもなれ、半年に一回しか会えないがためにいよいよ思いがつのるということもある。いわば「遠距離風俗」である。女の子としては、「この人はどうせ頻繁には来ない」と思うと、おざなりになりがちではあるが、「旅の人だから」と心を許すこともあるものだ。

札幌に行った時のこと。取材ではなく、客としてソープランドにでも行くかと思って、地元の風俗誌を見ていたら、私好みの美人さんがいる。この地域では最高級店に属するクラスだが、地方都市ではよくあるように、高級店でも東京の大衆店の料金の範囲である。ためらいなく店に電話をした。今日は出勤していて、まだ空きがあるというので予約を入れた。

数時間後に会った実物のカオリちゃんは写真通りの美人である上に大変気さくで、プレイ前にダベっているうちに、話がとまらなくなってしまった。

「出張なんですか?」

「そうだよ。雑誌の取材で来ているんだよ」

「へえ、じゃあ、東京から?」

「うん」

「私も去年までは東京にいたんですよ」

出身地に戻ったのではなく、彼女は出身が東京。なのに東京を離れて、この街にやってきた事情を彼女は語り始めた。

どこの誰か特定されかねないため、詳しい話は伏せるが、彼女はある世界でちょっとは名の知られた人物であった。そこでトラブルがあって、逃げるように札幌へ。

彼女はバッグの中から、その証拠とも言える写真を出してきて、私に手渡した。

「これ、あげますよ」

その当時の写真だった。

 

 

このあとまた来てくれない?

 

vivanon_sentenceそんな会話で時間をたっぷり使ったために、マットからベッドに移ってすぐに時間が来てしまった。そこで「延長するよ」と言ったのだが、彼女がフロントに確認したところ、あいにくこのあとは予約が入っている。人気があるのだ。

東京だったら、後日、出直せばいいのだが、この日は金曜日で、月曜日に私は東京に戻らなければならない。週末、彼女は出勤していないため、再び店で会うことは不可能だ。

「ねえ、もしよかったら、今日、また来てくれない? このあとはまだ空いていると思うんだ。もっと一緒にいたいし、話したいことがいっぱいあるの」

 

 

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