松沢呉一のビバノン・ライフ

ピエール瀧が逮捕されて電気グルーヴの曲が聴けなくなる理不尽—懲戒の基準[13]-(松沢呉一)

法で処罰されない大麻の使用で免職はおかしくないか—懲戒の基準[12]」の続きです。

 

 

 

ピエール瀧の逮捕で即日CDが回収されるのは不当では?

 

vivanon_sentence一昨日の深夜から昨日の早朝にかけて、Facebookが世界的にダウンし、今までに見たことのない表示が出てました。そのあとも、投稿ができなかったり、リンク先のサムネイルが表示されなくなったりしていて、「どうなっているんだ」と、珍しくタイムラインをチェックしたら、ピエール瀧の逮捕の話題で持ち切りでした。そっか、ピエール瀧の逮捕でFacebookはダウンしたのか(違う)。

私も、その旨の投稿をしてましたが、こういう時に、ピエール瀧が関わったCD、ゲーム、テレビ、映画などが出荷停止になったり、発売中止になったり、差し替えになったりすることに対する批判をしている人たちがいっぱいいました。

その辺を改めてまとめておきます。

電気グルーヴなりピエール瀧個人なりと、事務所やレコード会社との間で交わされた契約では、こういったことがあると契約解除が可能になっていることはあり得ると思うのですが、作品についてはそんな契約はないのでは?

知る限り、出版契約書にはそんな条項はありません。実際、コカインなりマリファナなりで捕まったからと言って、その著書や被写体になっている写真集が回収になるなんてことは聞いたことがない。新規で出る予定のものが延期になるくらいのことはあるかもしれないとして。

出版物が回収になるのは、その内容や物としての本に重大な瑕疵がある場合です。著作権侵害があったとか、名誉毀損があったとか、落丁があったとか。出版契約書は著作物を本にして販売する契約であって、それを書いた人物が何をしようとその表現物に影響はしない。

しかし、音楽についてはこうなってしまう。はっきりとはわからないですが、合意なき一方的な回収は、契約違反の可能性があると思うなあ(ピエール瀧の場合は所属事務所もレコード会社もソニーなので、レコード会社と事務所の合意がなされている可能性もあります)。

テレビの場合はスポンサーとの契約があるので、そっちが優先されるのはやむを得ないかもしれないですが、企業タイアップがない限り、曲はそのまま販売していいでしょ。「コカインかあ」としみじみと曲を聴きたがっている人たちがいるのに、販売しないでどうするよ。皆さんのために、ワシがカラオケで「シャングリラ」を歌っちゃろか。

 

 

図に乗るクレーマーたち

 

vivanon_sentenceその著作物を販売するのが契約上の責務であるにもかかわらず、レコード会社がなぜそんな処分をするのかと言えば、そうしないと、自分らにも批判が向くからかと思います。事なかれ。

メールの現物を見せてもらったこともありますが、実際に、メールや電話が来るのです。「なぜおたくは犯罪者の汚れた作品を出し続けているのか」と。噂レベルでも来ます。暇なヤツらが多いのです。噂にいちいち対応してられっかよ。

これはなにかしらの犯罪などの不祥事があった時に、その個人が属する職場に「クビにしろ」というクレームをつけることの延長でしょうが、このシリーズで論じているように、懲戒処分もそう簡単にはできないのと同じく、契約上、そう簡単にはできないはずです。

でも、こういう要求をする人たちはそんなことは考えてないんでしょう。「複雑な問題に簡単な答えを求める人間」たちです。ナチスが来るぞ。

 

 

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