法で処罰されない大麻の使用で免職はおかしくないか—懲戒の基準[12]-(松沢呉一)
「業務外の行為に対する懲戒はどこまで及ぶか—懲戒の基準[11]」の続きです。
このシリーズは「ネトウヨ春(夏)のBAN祭り」からスピンアウトしたものなので、図版がない時は祭りの写真を使っています。
公務外非行
では、公務員の非違行為はどうなっているのかを確認してみましょう。前にも見たように、国家公務員の場合は、人事院が細かな非違行為の基準を出してます。
人事院の基準は「だいたいこんな感じでどう?」といった指針を出したものであり、各省庁の実際の基準はそれぞれの性質によって少し違っていることがありますが、おおむねこれに倣ってますし、地方公務員もだいたい同じです。
人事院の指針に示されているように、この範囲でも悪質な場合や繰り返されている場合、責任ある立場にある場合などはこれより重くなることもあります。逆に軽くなることもありますが、ざっとこんな感じです。
読みどころはこの辺。
3 公務外非行関係
(1) 放火放火をした職員は、免職とする。(2) 殺人人を殺した職員は、免職とする。(3) 傷害人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。(4) 暴行・けんか暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったときは、減給又は戒告とする。(5) 器物損壊故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。(6) 横領ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給又は戒告とする。(7) 窃盗・強盗ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。(8) 詐欺・恐喝人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、免職又は停職とする。(9) 賭博ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。(10) 麻薬等の所持等麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等をした職員は、免職とする。(11) 酩酊による粗野な言動等酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。(12) 淫行18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。(13) 痴漢行為公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とする。(14) 盗撮行為公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けていない状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減給とする。
このうちの放火や殺人、強盗については捕まれば懲役刑は免れませんから、そもそも出勤が困難です。裁判で実刑を食らわなくても、拘留期間は出勤できず、それをもって懲戒処分にすることが可能でしょうが、あえてこのような基準を出しているということは、出勤できるかできないか、業務に支障があるのか否かといったことが問題になるのではなく、そういった行為をすること自体が懲戒の対象になるってことです。これは前回見たように国家公務員法が根拠です。
懲戒は軽くていいもの
軽いと感じるムキもありましょうけど、これらは、それぞれの行為に対する法的な刑罰とは別です。罰金刑なりなんなりで法に基づいた償いをしたり、示談で金を払ったり、民事訴訟で損害賠償をしたりした上で、職場での処分を定めたものですから、ボチボチの厳しさでいいのです。
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