松沢呉一のビバノン・ライフ

解決は簡単、しかし、おそらく実現はしない—京都造形大学に対する訴訟[6]-(松沢呉一)

事前説明をしても無駄であることを明らかにした事例—京都造形大学に対する訴訟[5]」の続きです。

 

 

デタラメな定義をやめるべし

 

vivanon_sentence今回の訴訟で、私自身、考え方が少し変わったところがあります。とは言え、訴訟の内容がわからないので、これでいいのかどうか自信はないのですけどね。

今までは防止用のガイドラインの定義はアバウトでいいと考えてました。なぜアバウトでいいのかの理由は「防止策の定義は判定基準にならない—セクハラって何?[4]」を参照のこと。しかし、今回の訴訟を見ると、そうもいかないのかもしれない。

セクハラをしたと疑われる教職員なり学生なりの視点から考えた時に、「セクハラの加害者」であるとの認定は服務規程や処分規程に基づけばよく、ここをしっかりしておけば、その前段階での間口は広くとっておいていいと思っていたのですが、行為者の責任を問うのではなく、学校の責任だけを問うのであれば、ガイドライン上のセクハラに該当すれば事足りるってことになるのかもしれない。「ガイドラインの定義によるセクハラを防止できていないですね」と詰めればいいだけ(ここだけ読んでもわかりにくいかもしれず、「セクハラって何?」シリーズを最初から読むとよいかと思います)。

今回のケースでは、「いえ、あなたはガイドラインの対象ではありません」と突っぱねてよかったわけですし、事実、そうしたがゆえにこじれたのかもしれないですが、ここはわからないので、すっ飛ばすとして、今回のケースから離れた一般論として、ガイドラインの定義だけを問題にする方法は有効ではなかろうか。そんなことをして何になるって話ですが、個人の不快感の腹いせとしては有効。他人の不利益など知ったことではなく、世界は自分の見たいこと、知りたいことだけで満たされて欲しいと願う人にとっても有効。

 

判定委員会みたいな学内の機関が適切に判断するから、そう簡単にはハラスメントにはならないという考え方もあるでしょうが、今回はそうならなかったのだし、成文化された基準に従うべきであって、成文化されない勘みたいなもので判定するのは正しくなく、訴えられたら対抗できないのではなかろうか。結局、アバウトな定義に縛られてしまうのです。

※鷹野隆大『光の欠落が地面に届くとき距離が奪われ距離が生まれる

 

 

京都造形大学のセクハラ防止ガイドライン

 

vivanon_sentenceでは、京都造形芸術大学ハラスメント防止に関するガイドラインで、セクハラの定義を確認してみましょう(レイアウトは若干手を加えていますし、機種依存文字も変えてます)。

 

 

4.ハラスメントの定義

教育・研究・就労の場におけるハラスメントについて、便宜上3つ(セクシュアル・ ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、パワー・ハラスメント)に分けて定義 します。しかし、ハラスメントはこの 3 つに限定されるものではありません。また相 互に関係しあいながら発生することも多く、それぞれの境界は明確なものではありま せん。 男性から女性だけでなく、女性から男性、同性間などあらゆる場合を含みます。 また、学生と教職員、教職員間、学生間で起こるすべてを含みます。

 

a.セクシュアル・ハラスメント

(1)セクシュアル・ハラスメントとは、「相手の望まない性的な言動や行為によって相手に 屈辱感や精神的苦痛、不安感を感じさせる事」で相手の人間性を傷つけることをいい ます。 セクシュアル・ハラスメントという行為は、人権の侵害であり、その背景には人権尊 重意識の欠如、性別役割に関する偏見や固定概念、女性蔑視、セクシュアリティに関 する差別意識、異性間・同性間における様々な力関係などが存在します。重要なのは、 それらが相手の自尊心を深く傷つけ、人格を傷つけるという事を理解する事です。

 

(2)セクシュアル・ハラスメントには次の二つのタイプがあります

1 対価型

職務上の地位や権限を利用し、または成績評価、卒業判定、人事考課などにおいて有利に扱うことと引き換えに性的性質の要求が行われたり、あるいはそれを拒否すると不 利に扱うことをほのめかしたりすること。

:コンパの席上などで教員が学生にお酌やデュエットを強要したり、体に触れること。 :教職員と学生、先輩と後輩、といった力関係を利用して性的な誘いかけや嫌がらせ を繰り返すこと。

:性的な要求を拒否した為に不適当な評価をしたり不当な配置換えをすること。

 

2 環境型

性的性質の嫌がらせ、掲示などにより相手に不快感を抱かせ、学習、研究環境や労働環境を悪化させること。

:執拗にもしくは強制的に性的行為に誘ったり、交際の働きかけをすること。

:不特定の相手に対してわいせつな写真や画像を掲示して見る事を強要すること。 :性的魅力をアピールするような服装や振る舞いを要求すること。

:性的な意図を持って、相手の身体へ一方的に接近したり接触したりすること。

:「男性のくせに」とか「だから女性は…」というように性差を一般化してそれに対す る軽蔑的な発言や話題を持ち出すこと。 :性的な中傷やうわさを広めること。 :性差により仕事の役割分担を固定化し、補助的な仕事しか与えないこと。

 

 

 

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