松沢呉一のビバノン・ライフ

男の客の方が楽だと口を揃える—女の客も相手にするノンケの売り専ボーイたちに聞く[中]-[ビバノン循環湯 526](松沢呉一)

新宿二丁目の変質—女の客も相手にするノンケの売り専ボーイたちに聞く[上]」の続きです。

写真は前回と同様、このサイトから借りました。すべて着色しています。

文中に「ホモ」という言葉が連発しますが、これはボーイたちに合わせたものです。そうじゃなくても私は使いますが、蔑称でもなんでもなく今も使われている言葉です。彼らはノンケですけど、当事者であろうとなかろうと、差別的意味合いなく使用する言葉であり、歴史的経緯も現実も見ようとしないまま、すぐに差別用語認定をするヤツらはうぜえ。詳しくは「「ホモ」を差別用語にするな—心の内務省を抑えろ[6]」参照。

 

 

 

収入は月に三十万から四十万円

 

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新宿二丁目の新興勢力の売り専バーで働くボーイたちの話の続き。

気になる収入について。

——月の稼ぎはどのくらい?

「収入は人によって全然違うけど、僕の場合は、月に十五日くらいの出勤で三十万円から四十万円にはなる」(切人)

涼君も同じくらい。

泊まりの場合は三万円のうちの二万円が、二時間の連れ出しの場合は一万八千円のうちの一万円がバックされる。確実に泊まりがつけば半月の労働で三十万円になる計算だ。月に半分働くだけでこの収入なら相当にいい仕事。

しかし、これは美形の彼らだからこその収入。

「十日出て一本もつかないのがいますよ」(涼)

売り専バーで本人を見て相手を決定するので、写真や宣伝文句でごまかすことができず、ヘテロ向けの性風俗店のように黙っていてもフロントがフリーの客を回してくれるということもないため、売れっ子とそうではないボーイとでは大きな差がつく。

マネージャーが客の要望を聞いてどのボーイがいいのか教えてくれたりもするが、指名されるのかどうかはもっぱら見た目で決まる。それしか判断基準がないのだから当然だ。

しかし、男の客と女の客では「見た目」の意味合いが少し違う。

「女の客は清潔感のあるイケメンを好む。男の客も見た目を重視ですけど、ホモの趣味は細かく分かれるので、ある程度は指名にばらつきが出ます。男の客はほぼ100パーセント、エッチまでしますから、体つきも大事ですけど、女の客は飲みがメインなので、顔や髪型のようにパッと見がいいのを好むんです」(切人)

男は見た目、女は内面なんて話はこの段階ではまったく通用しない。その上で女の客は内面をも求める。要求が多いのである。

 

 

男の客はセックスするだけ、女の客は精神性を求める

 

vivanon_sentence客の半分は女でも、セックスする相手は男の方がずっと多いわけだ。しかし、意外なことに、彼らは男の客の方がいいという。

「女の客は僕らに男を求めるから、エスコートしてあげなきゃいけない。男の客は僕らを女として扱うので、言いなりになっていればいい。仕事として考えたら男の客の方が楽なんです」(切人)

 

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