松沢呉一のビバノン・ライフ

自由学園に感激しました—TOKYOレインボープライド2019[上]-(松沢呉一)

 

 

この日の朝のこと

 

vivanon_sentenceしばらくは安定していたのですが、このところ、また長時間寝ることができなくなっていて、パレードの前夜も、1時間半で起きて、それからまた寝て1時間半で起きて、計3時間寝たところで、これ以上は無理だというので、朝6時からやっている久が原のますの湯に行きました。

ここは昨春リニューアル・オープン。リニューアルになると、行ったことのある銭湯でも、行ったことのない銭湯でも行きたくなります。

でも、大田区にはなかなか足が向かない。都内の銭湯制覇を目指す私でありますが、池上線や多摩川線沿線の銭湯を多数残してしまっていて、この春はこの辺を重点的に攻めてます。だんだんこの辺が好きになってきています。長閑でいいんですよ。

ますの湯はビルの中にあって、暖簾に書かれた脱力系の文字がいい感じ。大田区は行くのが億劫ではあるのですが、行くと満足できる銭湯が多いのです。都内でもっとも天然温泉の銭湯が多い区ですから、それだけでも行くかいがあるってもんです。

ここは水風呂も天然温泉。ふだんはそんなにサウナに入らない私ですが、水風呂の気持ちのよさを倍加させるためにサウナも入っておきました(ここはサウナは無料です)。砂時計を見ながら「なかなか3分経たないな」と思っていたのですが、10分の砂時計でした。しゃあないので10分我慢して水風呂に入ってきました。あー、気持ちよかった。

洗い場に寝ることができそうな椅子があって、このまま寝ていこうかと思ったのですが、こういう時に限って寝過ぎるので、やめておきました。

ここを出て、近隣を散策。なにか歴史的な経緯があるのでしょうけど、この辺は神社仏閣が多い。

2時間ほど散策しまして(散策しすぎかと)、ヘビスポットも発見。アオダイショウとヤマカガシがいるらしい。

さらに警察情報によると、ここらでは道路を亀が歩いていることがあるそうです。多摩川が近いですが、亀が出歩くほど近くもないので、寺の池から出てくるんじゃなかろうか。

久が原の周辺は段差があって、坂が多いため、代々木公園に着く頃にはもうクタクタですよ。

 

 

自由学園のブース

 

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睡眠不足、サウナ、歩き過ぎのトリプルで疲れて代々木公園へ。

ゴールデンウィーク中は休みにすることにしたため、TOKYOレインボープライド2019のことを「ビバノン」に書く予定はありませんでしたが、行ったら行ったで発見があって、書き残しておきたくなるものです。

今年、感激したことのひとつはこれ。

 

 

今までも大学のサークルがブースを出していることはありました。早稲田大学が以前から出していましたし、今年は東大と筑波大が共同で出してました(以前も出していたかもしれないけど、記憶にない)。これらはサークルです。規模の大きなサークルだと部員が100人を超えますから、1人数千円を出し合えば経費は出ます。

自由学園は大学もあるんだっけかと思いつつ、呼び込みの声を聞くともなく聞いていたら、高校生だと言ってました。ブースの中を見たら見るからに高校生たちと教師らしき大人でした。

疲労困憊していたため、中には入らなかったですが、あとになって「サークルだとしたら、どこからどう費用を捻出したのだろう、あるいは少子化の時代、学校がLBGT対応をして生徒の確保を狙って金を出しているのだろうか」なんて考えているうちに気になってきて、検索をしてみたら、学校のサイトに大きくお知らせが出てました。

 

 

 

ははあ。2017年、寮で一人の男子生徒がカミングアウトしたことから議論が始まって、有志のグループが発足、教員もこれをサポートして活動をスタートし、その活動で賞も受けていて、本年はレインボープライドにブースを出し、これを学校が支援しています。

ここには男子部の生徒とありますが、ブースには女子もいました(自由学園は校内別学)。全学校を挙げてのプロジェクトです。

これに続いて、5月2日はこんなイベントがあります。

 

 

学校側からの金銭的サボートもあるのかもしれないですが、この参加費が出店費用になっていそうです。こういった催事の参加費としては異例に高いのはたぶんそういうことですね。自由学園の関係者だけじゃなく、他の学校の教師や親たちも行くとよろしいんじゃないでしょうか。

頭だけで考えていると、現実とズレていくことがよくあります。たとえば、LとBとGとTが違うだけでなく、LもBもGもTもその中で多様であり、その4文字には入り切らない人たちもいます。結局のところ、最後は個人です。言葉から入っていくとそこが見えにくくなることがあります。

でも、代々木公園に行けば、一見していろんな人たちがいることがよくわかりますわね。「深刻なテーマだと思っていたのに、どうしてこんなにみんな楽しそうなんだろう」「どうやって髪の毛を盛っているんだろう」「どうして半ケツを出しているんだろう」「トコロテンとはなんだろう」といった疑問をいっぱい持ち帰れます(会場を歩いている時に、トコロテンをした話で盛り上がっている人たちとすれ違いました)。私も「どうして自由学園が」との疑問を持ち帰りました。

コンドームが配布され、TENGAのブースも高校生たちのブースもあるイベントは全国でもここだけでしょう。今のところは、です。

 

 

 

 

今までにない高校生たちのブースを出したことで、彼ら自身、この場の多様性を広げました。多様性は、眺めているだけでなく、自身が参加し、主張することで実現されます。

 

 

アジアとのネットワークは着々と強化

 

vivanon_sentence今年は今まで以上にブースが充実していました。

台湾と韓国のパレード主催団体もブースを出してました。

 

 

フラッグをくれたスタッフに「何年か前に同性婚のための台北のコンサートに行ったよ」と言ったら喜んでました。ソウルのパレードで知り合ったヤツとも再会。

30年以上前に台湾で初めてカミングアウトした祁家威さんも来ていて、話しかけようと思ったのですが、ずっと人と話していたので、話しかけられなかったのが残念。私の中国語が通じる自信がなかったですし。

各国の観光局もちょっと増えた感じ。グアムやスペインは今年初じゃなかろうか(私のアバウトな記憶であって確認はしてません)。

 

 

LGBTツーリズムなんて言葉があるのですね。実際、私の周りでも旅行が好きなゲイが多いかも。実行委員長の山縣さんもよく海外に行ってます。カップルで行っている人たちもよくいます。

JALのブースもJTBのブースもありますので、観光局のブースで話を聞いて、旅行に行く気になったら、すぐに対応可能です。

上の写真でも背中が見えますが、グアム観光局は、ミスユニバース・グアム代表まで送り込んできました。

 

 

右はフレディー・マーキュリー。つうか、久々のG.O.Revolution(男装ドラッグクィーン)。G.O.Revolutionをやるのは十数年ぶりらしい。

 

 

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