松沢呉一のビバノン・ライフ

教員が生徒の親とセックスをした場合—懲戒の基準[17]-(松沢呉一)

厚労省・武田康祐課長は懲戒免職が妥当—懲戒の基準[16]」の続きです。

 

 

 

教師と生徒の性行為は処分対象

 

vivanon_sentence前回見た厚労省の役人が韓国の空港で暴れて暴言を吐いた件については続報はとくになく、厚労省のサイトを見ても、懲戒処分の発表はないようです。すぐには処分はできないとしても、このまま処分なしは納得しにくいですから、注視していたいと思います。

これも前回書いたように、官公庁と民間企業では処分に違いがあって、同じことをやっても、民間では処分なし、あるいは軽い処分になることはありましょう。民間企業でも、韓国と取引があって、業務に支障が生じたとあればまた別として。

だからといって民間の方が甘いとは一概には言えず、ざっくりとした基準しかない中でアバウトな処分がなされていることが多い印象です。公務員であれば停職になるところで、会社員は解雇されたり、逆にお咎めなしだったり。だから裁判にもなりやすく、不当処分の判決もしばしば出ています。裁判にならずに処分されている例はその何倍もありましょうね。

どちらも私的な領域での民事的トラブルでは原則処分はありませんけど、職場に不利益を与えるような言動や職業倫理に反するものについては、刑事、民事ともに問題にならないようなものでも処分されることがあります。たとえば会社員であれ、公務員であれ、そのことで業務に支障を来すようなことがない限り、社内恋愛をしたところで、それ自体で懲戒処分はできないし、それを禁ずる規定があったところで無効でしょう。それが不倫であったとしても。

しかし、教員が生徒と教室内恋愛をしてセックスまで至った場合は、そのことでの支障が生じていなくても懲戒処分になります。

以下は、東京都教育委員会の処分規定。

 

 

 

教育委員会の基準ですから、公立の小中高の教員が対象です。私立は別、公立私立を問わず大学も別ですけど、小中高については私立でも同じような規定がありましょう。小学校だと法律上、ダメですし、状況によっては淫行条例にひっかかります。

これは力関係によって、生徒が断れないというセクハラ的論理による規定ではなくて、合意があろうとも、また、生徒側から迫ったのだとしても、処分対象です。愛情があるかとか、将来結婚を約束しているとかも関係なし。

このままでは卒業できないという時に、もし教員がその生徒とセックスをしたら、「数字をちょっと水増しして、卒業させるか」になるでしょ。私だったら確実にそうします。公正、公平な判断を阻害する行為としてアウトなのだろうと思います。

 

 

では、教師と保護者のセックスは?

 

vivanon_sentenceだったら教員が保護者とセックスした場合はどうなんだべ。

弁護士ドットコムでは、意見は割れていて、生徒の親と教師が不倫をしても処分対象にならないという意見の弁護士もいます。

 

 

 

教育委員会によるとしている弁護士が正しくて、東京都教育委員会についてはアウトです。

 

 

 

next_vivanon

(残り 2286文字/全文: 3569文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ