松沢呉一のビバノン・ライフ

風俗嬢は私生活のデートにも気を遣う/従業員もデートに気を遣う/私もデートに気を遣う-[ビバノン循環湯 535] -(松沢呉一)

2000年頃に風俗雑誌「PING」の連載に書いたもの。写真はデート風景の著作権切れのものを集めてみました。着色してます。

 

 

 

風俗嬢はデートにも気をつける

 

vivanon_sentence渋谷や池袋、新宿あたりでは、仕事がオフの日に、友だちと買い物に来ていたり、カレシとデートしている風俗嬢を見かけることがある。カレシと腕組んで歩いていると、客に見られかねず、客がうっかり声をかけて彼氏とモメかねないため、オフの日に、働いている店の近くに出掛けるのを避けるコも多いのだが、今時の風俗嬢の中には全然気にしないのもいる。

風俗を辞めてから1年以上になるので、もう名前を出してもいいだろうが、拙著によく登場していた池袋の性感ヘルス「フレッシュメロン」の満里奈ちゃんは、仕事のあと、池袋でよくカレシとデートしていた。

仕事の日じゃなくても池袋でデートしていて、待ち合わせ時間まで店で時間潰しをしていることもあった。カレシは彼女が風俗嬢であることを知らないのに、大胆な娘である。

3年ほど風俗嬢をやって、風俗嬢として雑誌にも出ていただけじゃなく、モデルとしてもエロ雑誌に出ていたし、拙著でもヌードを披露してくれたが、最後までカレシにも親にもバレずに引退した。

彼女はカレシがいることを客にも言っていたので、見られてもいいと思っていたのだろう。それでも目の前でデートしているところを見て嫉妬した客がわざとその場で声をかけたりしかねないので、慎重にやった方がいいと私は思っていたものだが、彼女の場合はカレシにばれても「おいしいものをおごってごまかす」「それでも納得しなかったら別れる」とでも考えていたんだろう。

A zipline date, 1920s

 

 

若い男とデートしていたことで店長に喜ばれるララちゃん

 

vivanon_sentence満里奈ちゃんが辞めたあと、ナンバーワンだったしほちゃんも退店した。

それに代わってナンバーワンになったのがララちゃんだ。このコは奇跡的なおっぱいをしている。大きいのに、全然垂れていなくてパーンとせり出しているのだ。取材で初めて会って、おっぱいを見て私も編集者もクラクラした。

会ってから1ヶ月ほどしたある日のこと。上野で、男と嬉しそうに腕を組んで歩いているのを見かけた。こういう場合は声をかけるとトラブルになりかねないので素通りした。私らも気を遣うのである。

「この仕事をやっている限り、カレシは作らない」と言っていたのだが、あれは客向けのセリフだったのか。それとも、そう思っていたはずなのに、好きになった男が現れたのか。

後日、「あのコ、カレシがいるみたいだね」と「フレッシュメロン」の店長にその話をした。店長もカレシがいることを知らなかった。

「ホントに彼氏かなあ。今のコたちはカレシじゃなくても腕くらい組むからね」

「まあね」

「どんな男だった?」

「背の低い冴えない男だったな。ホストとかそういうタイプでは全然ない。中身まではわからないけど、彼女には不釣り合いだったね。もしかすっと客かもしれないな」

「ホストでも客でもいいんだけど、歳は?」

「20代半ばくらい。若かったよ」

「そりゃよかった」

何がよかったのかよくわからん。

「いやー、あのコはね、この仕事をやる前に、30代、40代のオジサンとしかつき合ったことがないんだよ。ようやく人並みの恋愛ができるようになったかと思うと、オレも嬉しいよ」

本人としても、若い男とデートできただけで嬉しくて嬉しくて皆に見てもらいたかったのかもしれない。

5links.jp

 

 

いい乳だと客に嫉妬される

 

vivanon_sentenceこの数日後、この店のフロントにいた時に本人が顔を出した。

「あー、前に取材で会った人ですよね」

「おう、元気か。この間、上野にいただろ」

「上野は近いからよく買い物をしていますよ。声をかけてくれればよかったのに」

 

 

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