松沢呉一のビバノン・ライフ

レインボーフラッグとレッドアンブレラ—TOKYOレインボープライド2019[下]-(松沢呉一)

人が集まるブース・集まらないブース—TOKYOレインボー・プライド2019[中]」の続きです。

 

 

 

パレードがスタート

 

vivanon_sentence

今回のパレードは、クィア&セックスワーカー・フロートを出すSWASHからちょっと話を聞いていただけで、どこにも関わっておらず、精神的に低迷していることもあって、「行くかどうかわからない」とも人に言ってました。

結局行ったわけですが、その事情を説明した通り、この日は朝から本当に疲れ切ってまして、代々木公園に着いた段階で倒れそうで、ブースを一通り見た段階で「倒れそう」から「死にそう」に。

そうこうするうち、パレードはスタートしました。

 

 

 

 

立憲民主党はタオルまで作ってますし、共産党は背中に羽が生えてました。

 

 

着々人数を増やすLGBT自治体議員連盟。

死にそうになりつつも、押さえるべきところは押さえてみました。

 

 

クィア&セックスワーカー・フロート

 

vivanon_sentence

最初のフロートは実行委のフロートです。

 

 

 

クィア&セックスワーカー・フロートはまだまだ先で、一周して戻ってきても間に合いそうだったのですが、そんな体力も気力もなくて、ブルボンヌの至上の笑顔を確認したところで引き返して、準備中のクィア&セックスワーカー・フロートに行ってみました。

SWASHの要友紀子から聞いていたのはおもに資金繰りのことで、誰がフロートに乗るのかも知らなかったのですが、今回は畑野とまとげいまきまきPONPONのSWASH関係3名と、ゲイAV界から蒼武蔵Ryuji Suzukiの2名がフロートに乗りました。

 

 

 

 

 

パレード仕様に底上げされた渋谷・原宿

 

vivanon_sentence今回私が注目したのは蒼武蔵Ryuji Suzukiの存在感です。

そのことを書けば書くほど内輪受けっぽく見られそうなので、先にお断りしておきますが、私はこれまで彼らの存在を知らずにいて、SWASHともこれが初コラボです。これから内輪になっていくかもしれないですが、現状では内輪ではありません。ゲイビデオを観ないですから、その意味での身贔屓ってことでもない。

今回は他のフロートをほとんど見てないので、全体を見ての評価ではないのは事実として、距離のある視点で見ていたつもりです。それでも書かないではいられないことが起きました。

彼らにはそれだけの力があることは間違いないとして、それを成立させた環境というものもあります。長年バレードを続けてきて、渋谷や原宿の街がパレード仕様に底上げされています。前回確認した浸透があってのことだとまず確認。

丸井は今年も全面バックアップ。

 

 

 

リーバイスはブースも出してますし、パレードのコースに面している原宿店の看板もレインボー。ブースの看板とお揃いです。

 

 

以前、路上からはメッセージが見えないのがもったいないと書きましたが、こんなにわかりやすくなって、店員もレインボーのバンダナをつけてました。ここに店舗を持っていることの強みです。

LUSHは多数のスタッフがパレードに参加し、原宿店では店舗からも応援して、パレードと店舗が一体化。これもここに店舗があることの強みです。

 

 

協賛しているわけではなくてもレインボーを出している店も増えてます(見えにくいですが、パレードは反対側車線)。

 

 

入口脇の目立つところにポスターを出す店も。

 

 

当たり前になってきて、ありがたみがなくなったとも言えますが、最初の頃は店の前に小さなレインボーフラッグが出ているだけで泣きそうになるくらいに嬉しくて、「事前にレインボーフラッグをもって挨拶回りをすると、30軒に1軒くらいは出してくれる店があるんじゃないか」なんて話をしていたことが懐かしい。

路上で応援してくれる人がいるのも嬉しいので、路上応援団を組織しようなんてことも言ってました。仕込みです。以前から見物人は多かったのですが、参加しにくいから見物に留まっていたわけで、LGBT当事者は遠くから見るだけでなかなか反応はしてくれない。パレードと路上との隔たりが今よりずっと大きかったのです。

しかし、フラッグも路上からの応援もとっくに実現しています。「ハッピー・ブライド」でハイタッチする光景はほんの数年前までは一部でしか見られなかったですが、今はいたるところで見られます。

とくにここ数年はパートナーシップ条例ができて、アジアでも実質的な同性婚が実現する国が出てきていて、日本でも議論されるようになってきたのは大変な進歩です。また、テレビですっかりドラァグクィーンの存在も浸透しました。地方議会を中心にLGBTの議員が増えて、著名人のカミングアウトも少しずつ進んでいます。

といった環境の変化を前提に以下をお読み下さい。

 

 

蒼武蔵、Ryuji Suzukiに対する路上の反応

 

vivanon_sentence準備段階で、蒼武蔵、Ryuji Suzukiの2人の人気がすごくて、次々と写真を撮っていきます。

 

 

 

全部が全部ではないでしょうが、とくに台湾、韓国の男子たちの中には彼らを知っているのもいたのだろうと思います。熱心に写真を撮り続け、並んで写真を撮ってもいて、中にはフロートの上で一緒に写真を撮りたいと言い出したのもいました。

いざフロートが走り出してからも彼らの存在感には目を見張るものがありました。

 

 

 

ここまではわかります。ドラァグクィーンと同じで、「らしい写真や動画を撮りたい」「記念写真を撮りたい」ってことであり、他のフロートでも見られることです。

しかし、ここに留まらなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

手を振る、拳を振り上げる、そしてハイタッチ。SWASH関係で応援に来ていたのもいたかもしれないですが、仕込みじゃないです。

世の中にはゲイビデオが好きな女子もいますし、なにしろAV男優人気は高いですから、情報を知っていて来たのもいそうですが、いたとしても一部でしょう。大半はあの2人が誰か知らないまま、こうなったのだと思います。

どこの国の人かわからないですが、上の写真の最後のおねえさんは、このあと、すごい勢いでパレードの列に飛び込んで踊りまくってました。だいたいパレード見物に来る人たちは友だちと来るものですが、彼女は一人だったんですよ。フラッグもフライヤーも何も持っていなかったので、たぶんパレードがあることを知らずに原宿に来たんじゃなかろうか。

集団で隊列に入ることはあっても、プライド・バレードで、知り合いを見つけたわけでもないのに、単独で飛び込み参加する光景は初めて見たかも。他の人に聞いたところによると、このフロートでは何度かそういうことがあったらしい。

もしかすると、彼女はレッドアンブレラの意味まで理解した上で、あの盛り上がりだったのかもしれない。尋常ではない勢いでしたから。

 

 

next_vivanon

(残り 2176文字/全文: 5190文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ