松沢呉一のビバノン・ライフ

同じ業種でもひとくくりにはできない—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[2]-(松沢呉一)

店は客をどこまで選別していいのか—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[1]」の続きです。

 

 

公衆浴場は公共性が高い

 

vivanon_sentence小樽温泉入浴拒否裁判で原告が対温泉施設について勝訴した理由のひとつは、公衆浴場という点にありましょう。公衆浴場は公共性が高い。

これについては「軽蔑の言葉より利用お断りの方が重い—心の内務省を抑えろ[23]」を参照のこと。旅館やホテルは旅館業法、電車は鉄道営業法、バスやタクシーは道路運送法で、客を断れる条件が定められています。それ以外では客を断ってはいけない。医療機関は判例で合理的理由なしに断れないことが定められていますし、医師会の倫理規程もあります。

これらにおいて国籍で利用を断ったら無条件でアウトです。医師の場合は言語的な障壁によって適切な診断や治療ができないケースもあるため、対応できる病院に紹介したり、通訳を連れて来てもらうといったことはあるでしょうけど。

性別で断ることも同様ですが、女性専用のレディースクリニックがありますね。婦人科です。これにもそうする合理性があります。女性特有の病気があって、その専門医が専門を掲げるのは当たり前。ちょうどその前で倒れた男性の応急処置も断ったら問題になるとして。

公衆浴場法では、それらの業種のように「合理性のある理由なくして客を断ってはいけない」と明示されているわけではないですが、銭湯やサウナはそれに準ずる位置にある業種と言っていいでしょう。

同じ公衆浴場法の対象でありながら、銭湯とスーパー銭湯やサウナの位置づけは少し違います。たとえば銭湯が、「男性専用」「女性専用」とやったら法的にはともかく、問題にはなりましょう。組合には入れず、行政のサポートも受けられないだろうと思います。しかし、現に「男性専用サウナ」「女性専用サウナ」は存在しています。似た存在ながら、位置づけが違い、その間に線引きがあります。

 

 

温泉と銭湯とタトゥ

 

vivanon_sentence昨今、「温泉でタトゥ禁止にしているのはこの国際化時代にどうなのか」という話がしばしば出ています(下の記事はその例のひとつで、別府もこの件で苦慮している模様)。

もし「タトゥが入っているから」と診察拒否をする医者がいたり、乗車拒否をするタクシー運転手がいたら即刻問題になるのに対して、温泉ではすぐさま行政が乗り出すようなことはない。スーパー銭湯やサウナは命に関わるような業種、あるいは最低限の生活に必須な業種とは見なされていないためですが、議論になる程度には公共性のある業種です。

たとえば飲食店が「刺青のある方は入店をお断りします」とやってもまず問題にはならないわけで(裸にならないので確認しようもないということもあるわけですが)、公共性があるがゆえの議論です。

また、組合加盟の銭湯とスーパー銭湯やサウナは、この点でも公共性は少し違います。銭湯でタトゥお断りは1割もないでしょう。刺青お断りはたいてい最新型のファミリーユースの銭湯です。

対してサウナは大半がお断り。ワンポイントの小さなタトゥは見逃すという話を聞きますが、背中一面の和彫りはお断り。

銭湯はそういう客でも相手にしないとやっていけないということもあるでしょうけど、生活に必要な業種ほど客を断らないのは理にかなっています。サウナは行かなくてもなんとかなる。でも、銭湯がなくなると困る人たちがいます。

 

 

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