松沢呉一のビバノン・ライフ

おらがムラのルールが通じなくなっている時代—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[4]-(松沢呉一)

ゴルフクラブ入会拒否裁判で境界線を探る—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[3]」の続きです。

 

今回の騒動で気づかされたこと

 

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かつては二丁目全体が閉鎖的なエリアで、表通りも薄暗く、この街を知らない人がフラリとやってきて店に入るようなことは滅多にありませんでした。大多数の店が十人も入れば満員になるような狭い店ですから、客を選別する事情がありました。

韓国は日本同様小さな店が多いですが、海外では大きなゲイクラブが中心で、店の中で棲み分けがなんとなくできていたりします。しかし、小さな店が多数蝟集している二丁目では、店という単位で棲み分けをしていくしかない。ママが一人で切り盛りしている店が大多数だったでしょうから、トラブル回避のためにも客をそれぞれの店が制限するのはやむを得なかったでしょう。

そうすることの合理性は十分にあります。ゲイがゲイだけで酒を飲みたいというだけで十分な合理性です。ボックスが離れていればいいとして、カウンターしかない店で、すぐ隣にノンケの異性がいたら、安心して話ができない人たちもいるでしょう。

パートナーを探すという目的にとっても合理的です。性的対象になる人々との効率的な出会いを求める人たちのための場を提供する店であり、性的対象は個人の自由ですから、それを特化してもいい。

物見遊山でやってくるノンケ・グループもいて、そういった客を拾い上げるのは「観光バー」です。役割分担。しかし、そういった店でも、外からは見えない閉鎖的な作りになっていて、誰をも歓迎する街ではありませんでした(私が大学の時には新宿通りの南側にもゲイバーが点在していて、知らない人は気づきようがなかった)。

たとえばハッテン場のような業態は、警察がそこに入り込んで、その実情を調べることがあるでしょうが(ここでは公然わいせつ罪の適用が是か非かは問わない)、原則第三者、とりわけ公権力が介入すべきではない。

ここまで書いてきたようなことを以前メルマガで確認した上で、ゴルフクラブとは比較にならず規模が小さく、また、表通りにある宝石店のように、たまたま通りかかった人がフラリと入るようにはなっていない二丁目の店が客を性別で選別するのは許容範囲という結論でした。

しかし、今回のGOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題で、一律に「二丁目の店」とまとめてしまうことは無謀であることに気づかされました(そもそもメルマガではこういった個別例を考えるものではなく、「男性限定」「女性限定」の店はどういう論理で肯定され得るかを論じたものでしたから)。

 

 

ふたつの原則がぶつかる時

 

vivanon_sentenceここまで見てきたように、飲食店に関して特別に客の選別を規定する法律はなく、「店はどこまで客を選別できるのか」というテーマを決定するのは憲法です。

では、改めて憲法を確認してみましょう。

 

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 

「結社」というと黒ミサでもやりそうですが、あらゆる団体のことです。社会活動の団体だったり、慈善活動の団体だったり、趣味の会だったり、黒魔術の秘密結社だったり(笑)。

言うまでなく、公的機関は第十四条を厳守です。鉄道、バス、タクシーなどの交通機関や宿泊、医療など、誰もが等しく利用する可能性があり、利用できないと著しく不都合を生じる可能性のある業態は民間でも客を断ってはいけないことはすでに説明した通り。公衆浴場もそれに準ずる

 

 

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