松沢呉一のビバノン・ライフ

知恵を活かして棲み分ける—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[5](最終回)-(松沢呉一)

おらがムラのルールが通じなくなっている時代—GOLD FINGERのトランスジェンダー排除問題[4]」の続きです。

 

コンビニが国籍や性別で客を選別したらまずいことは自明

 

vivanon_sentence

二丁目にもコンビニやスーパーがありますが、それらの店が「外国人お断り」「女性お断り」「トランスジェンダーお断り」とやったら即刻問題になり、客が訴訟を起こせば確実に勝てます。

また、たとえば仲通り沿いの路面店で、外から店内が見えるようなCAMPY BARや柳通り(花園通り)沿いの路面店で、ガラス張りのココロカフェが「男性限定」「女性限定」とやるのはまずいという感覚は広い範囲で共有されるのではないでしょうか。ああいう店では、誰にも見られたくないような客は寄り付かないですから、現実に誰でも入れる店になっています。

大きな通りにあるオープンな作りの路面店はおおむねミックスであり、自ら「観光バー」と打ち出している店もよくあります。それを嫌う店は裏通りにあるか、ビルの中にあるという棲み分けが自然とできています。もちろん、ビルの中にも観光バーはありますけど、路面店を借りたくても家賃が高いですから、なかなかそうはいかんでしょう。

大通りの路面店で、なおかつ店内が外から見えるような店では。フラリと入る人たちがいます。ここでそんな事情など知らない外国人に、二丁目の成り立ちを考えて欲しいなんて言っても無理。路面店は公道から直結する店であって、その公道はもはや国外ともつながっているのですから、国際標準にするしかない。

ルミエールだって女の客がいることを嫌う客がいますけど、だからといってあの店の作りで、「男性限定」にしてはならない。ゲイじゃなくても、男じゃなくても、店の外に置かれたグッズ(今だと団扇を売ってます)が欲しい場合があるわけですから。女性客がイヤなら、ビルの中にあるショップに行くか、通販を利用すればいい。

その一方でビルの中には今なお「会員制」を掲げている店が多数あります。「会員制」としている以上、そこに第三者は介入しにくい。

といったように、同じ街の中でも、店の特性は違っています。それをまとめて「属性で断ってもいいのだ」とするから無理が生じる。コンビニやスーパーと会員制のバーが違うことくらいアホでもわかるはず。コンビニやスーパーはビジネス。会員制のバーもビジネスでありつつ「結社」、他の言葉で言えば「同好会」「サークル」「趣味の会」に近づく。オープンな作りにして、「ウェルカム」とやるのはもっぱらビジネスのための方策であって、それを選択するなら、客の選別はおのずと抑制されなければならないのです。

このことが別府の温泉でも問題になっています。「観光客ウェルカム」とやるんだったら、タトゥを入れている人たちを拒絶はしにくい。東京でオリンピックをやるんだったら、オリンピック憲章に基づきましょう。

 

 

GOLD FINGERはどうなのか

 

vivanon_sentenceでは、GOLD FINGERはどうなのかと言えば表通りではないですが、路面店です。

 

 

私はGOLD FINGERに入ったことはないですが、フラリと入ってしまいそうな店構えであり、道に面した壁はガラス張りですから。外から店内も見えます。

しかも、GOLD FINGERが置かれた位置というのがあります。レズビアンバーを代表する店と言っていい。もしくは二丁目を代表する店のひとつと言っていいでしょう。

 

 

next_vivanon

(残り 1237文字/全文: 2680文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ