松沢呉一のビバノン・ライフ

「最近の若いモンは」に食いつく人々—「大学生の4人に1人が太平洋戦争で米国と闘ったことを知らない」というエピソードの危うさ[上]-(松沢呉一)

 

半藤一利インタビューの危うい部分

 

vivanon_sentence徐々にその傾向が強まっていたのですが、昨年あたりから、Facebookは「ビバノン」を更新するだけのツールとなってまして、自分のタイムラインを見ることがほとんどなくなってます。

そのため、昨今の世の中の動きがまるでわからなくなり、さくらももこが亡くなったのを知ったのは今年になってから、「噂の真相」の岡留安則が亡くなったのを知ったのはつい最近でありまして、これではまずいと先週あたりかから世の中の動きについていこうと思って、この間の記事を読み、Facebookやネットニュースを見るようにしています。

数日前に読んだのはこれ。

 

 

2019年06月21日付「FRIDAY」より

 

 

これを読んだのは記事が出た翌々日の23日で、その感想はFacebookに書きました

私がこの記事を知ったのは、以下の部分を取り上げた投稿でした。

 

 

「この前、3ヵ月だけ女子大で講義をしたんです。そのとき、アンケートをとります、と4択問題を出した。

『太平洋戦争において、日本と戦争をしなかった国は? ①アメリカ ②ドイツ ③旧ソ連 ④オーストラリア』

そうしたら、50人中実に13人がアメリカと答えた。次の週に、『僕の授業を聞いてるのに、君たち13人はふざけてるのかね?』と聞いたら、大真面目だと言う。しかもその一人が手を挙げてこう言った。

『で、どっちが勝ったんですか?』

 

 

私はこのインタビューで語られている「本人が言っているんだから間違いない、なんてことはないんですよ」という点に読みどころを見出していたのですが、上のエピソードに食いついていた人を見ていたので、Facebookで補足をしておきました。

 

 

どこの大学なのかによって意味は違う

 

vivanon_sentenceこの数字をどう評価するのかは大学によると思います。お茶の水や津田塾だったら一大事。偏差値40台の大学だったら平常運転。それにしても誤答率が高すぎるとは思いますが、たまたまその時の生徒の質が悪ければそういうこともあるでしょうし、この質問の仕方だと、「闘った相手はどこか」との質問だと誤解したのもいそうです(一方で、3や4と答えたのもいましょうから、誤答はもっと多いかもしれない)。

実際、歴史の素養が欠落した女子には驚かされることがあります。地理もそうです。日本の白地図を渡して都道府県を書き込んでもらったら、あるいはヨーロッパの白地図を渡して国名を書き込んでもらったら、10都道府県も、10カ国も正解できないのが何人かに1人は確実にいます。大学生でもですよ。

また、因数分解が理解できない大学生だってザラにいます。私もそうです。今に至るまでわかりません。私が数学がダメなのと同じように歴史や地理がダメなのがいてもそんなにおかしくないだろと思えます。

一方で、偏差値高い系女子校の出身者であれば不得意科目の克服をしている可能性が高いので、こういう学生が対象であれば誤答は限りなくゼロに近いはずです。

だから、この女子大がどこなのかがわからないと何も言えない。そう思って検索したわけですよ。こちらのインタビューにヒントが出てました。

 

それに加え、実はわたし、文藝春秋を辞める頃に、ある女子大に頼まれて3ヶ月半ぐらい講師をやったことがあるんです。国際情報学部といったかな、そこの3年生の女子大生50人にジャーナリズム論を教えました。そこで、「太平洋戦争」に関するアンケートをとったことがあるんです。「日本と戦争をしなかった国はどこですか」との質問に、「アメリカ、ドイツ、カナダ、豪州」から選んでもらったところ、アメリカに○をつけた学生が50人中12人いたんですよ。ふざけているのかと思ったので聞いたら「いえ、まじめにやりました」と。「ほんとにアメリカと戦争しなかったと思っているの」と尋ねると 「はい」という。驚きでしたね。そしたら、手をあげてくる学生がいた。「それ、どっちが 勝ったんですか」というんですよ。これには、さすがに、ぼくもひっくり返った。いくら昭和史が教えられていないからといって、あんまりだ。

 

ここでジャーナリスト論をとる学生が対象であったことがわかり、それでもこの数字。数字や選択肢が「フライデー」のインタビューとは少し違いますが、おそらく記憶が鮮明だった分、こちらのインタビューが正しいのでしょう。

 

 

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