松沢呉一のビバノン・ライフ

「猥褻で何が悪い」論は成立しない—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[10]-(松沢呉一)

日本の「わいせつ」分類と改善すべき範囲—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[9]」の続きです。

 

 

いいことだらけの法改正

 

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前回の分類を見ると、175条の範囲は広く、あれらをすべて猥褻として違法にしていることに無理があることがよくわかりましょう。

補足編」で説明したように、「わいせつ2」は日本で実現することは当面難しいので、諦めます。しかし、「わいせつ3」から「わいせつ6」まではすべて一度に改善したい。さもないと、今回のようなエロ中継、エロチャットの類いは、刑法174条か175条のどちらかで規制され続けてしまいます。

「わいせつ5」「わいせつ6」を改善すれば、今回のようなエロ中継、エロチャットの類いも合法になります。CAM4に出て、世界の人たちにオナニーやセックスを見ていただくこともできて、搾取がなく金を稼げます。

ゲイの出会い系アプリでチンコを晒してパートナーを探しても大丈夫。もうやっている人たちもいるでしょうが、それは現在違法です。警察がその気になれば、いつでも逮捕できます。

現状では、スペンサー・チュニックが日本で撮影しようとすると「わいせつ2」や「わいせつ3」に抵触します。撮影した作品で展覧会をやり、作品集にすると、「わいせつ2」「わいせつ3」の証拠とされると同時に「わいせつ6」に抵触します。

公道や広場、公園での撮影は諦めるとして、「わいせつ3」を改善すれば、北海道の個人所有の農地で、誰も入ってこないようにして撮影することは可能ですし、撮影した作品も公開も可能です。海外で撮影したものも日本国内で性器を消さずに公開可能になります。

チュニックに限らず、欧米+αの国で出ている作品集を日本で出す場合、消しを入れたり、その写真を外したりしてきたわけですか、これからは不要。性器ばかりを写した写真集もあって、はなっから日本では出せませんでしたが、これからは出せます。

チンコマンコを緻密に描いた漫画もOL。

「わいせつ4」を改善すれば、ストリップ劇場もハプバーもハッテン場も安心して営業できます。スワッピングパーティもびくつかずに参加できます。SMバーでチンコを出して踏みつけていただくこともできます(風営法上、接待営業ができる店なら店の女王様にやっていただけますし、接待営業のない店だと、客にやってもらえます)。

欧米+αの国の劇団やダンスカンパニーには全裸で公演していることがありますが、今後は日本でそのまま公演できます。

いいことだらけでしょ。どこに問題があるのかさっぱりわからない。

※スペンサー・チュニックの作品集『Reaction Zone

 

 

チープな道徳派のチープな批判を先取りしておく

 

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これに対して、どんな批判がありえるのか予想がつかないのですが、道徳派は何かと難癖をつけてくるでしょう。

大島渚 4 - 愛のコリーダ/愛の亡霊/マックス、モン・アムール [DVD]「だったら、渋谷のスクランブル交差点で勃起させたチンコを出すのがいてもいいのか」「電車の中でセックスているカップルがいてもいいのか」とか。

それは「わいせつ1」であり、どこの国でも逮捕されます。ミロ・モアレもマンコをいじらせて逮捕されています。

そんなことまで実現しようと言っているのではありません。ありもしない脳内海外を根拠にしたがる人たちと違って、現実に欧米+αで実現されていることを手本にしようと言ってます。「海外ではそんなもんは禁じられていない」と言っているだけです。「わいせつ2」は諦めるので、それでもなおそれらの国並にはならないですが。

一方、175条に比して、174条は今までさほど議論されてきていないため、改善を求める人でもトンチンカンなことを言い出すことが予想されます。

しばしばこの手の論争になると、「わいせつなんてものはない」「わいせつで何が悪い」「わいせつは定義できない」といった言葉を言い出す人たちがいます。あるいは「人間が生まれてくる性器を卑しいものとするのが不遜だ」とか。

それは今回の議論では不要な論であり、ノイズにしかなりませんので御注意ください。

 

 

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