松沢呉一のビバノン・ライフ

長崎県職員懲戒免職の理由は副業禁止規則違反か、わいせつ動画投稿が非違行為になるためか—懲戒の基準[34]-(松沢呉一)

デモに参加しただけ、デモ支持を表明しただけで解雇される香港の現実—懲戒の基準[33]」の続きです。

 

 

 

わいせつ動画投稿で逮捕された県職員が懲戒免職に

 

vivanon_sentence昨日、Facebookで、以下の記事がおすすめの投稿として表示されました。

 

学校職員の女、わいせつ動画投稿「認められたような気持ちに」

2019/09/09 09:48

長崎県教委は6日、わいせつな動画を動画投稿サイトに投稿するなどしたとして、長崎市立小事務職員の女(22)(わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪で起訴)を懲戒免職にした。

発表によると、女は2016年8月~19年2月、自身の体を撮影した動画約20本を動画投稿サイトに投稿したり、わいせつな内容を含む映像を60~70回にわたりインターネットで配信したりした。配信や動画の販売収入で約330万円を得ていたという。

女は17年4月に県教委に採用された。聞き取りに対し「交際相手に勧められて始めた。視聴者の反応で認められたような気持ちになった」と話したという。

京都府警は今年6月、女をわいせつ電磁的記録記録媒体陳列容疑で逮捕し、京都地検が同罪で起訴していた。

無断転載禁止

読売新聞」より

 

無断転載禁止」の文字まで無断転載してみました。新聞記事だからと言って、一律に著作権がないとは言えないですが、行政の発表をそのまま転載しているだけの記事に著作権などあろうはずがない(すべて教育委員会の発表が出元と思われます)。ただの事実の羅列ですから、著作物ではありません。著作物だとしても、教育委員会が著作したものであり、行政の文書は原則著作権の保護対象ではありませんから、無断転載可です。

それはともかく、Facebookは個人情報を垂れ流しながら、こういうところはしっかりしています。私は読売新聞のアカウントをフォローしていないですが、Facebookは私がこの件について書いていることをしっかり把握しています。

私の関心は動画投稿で逮捕されたこととともに、懲戒免職になったことでもあって、Facebookはその点でも「こいつには教えてやらなきゃ」と思ったのかもしれません。コンピュータはすごいなあ。感心しつつ怖いですけどね。

 

 

投稿本数が2本から約20本に

 

vivanon_sentence

この職員は「刑法174条・175条の見直し」シリーズを始めるきっかけになった一連の摘発の一人です。

あのシリーズの一回目「エロ動画を配信しただけで顔や名前まで報じる必要がどこにある」でピックアップした記事の冒頭に出てきたケースで、「県職員」というのは小学校勤務だったのですね。長崎県警は名前を出してません。適切かと思います。

教育委員会によっては処分が重い場合、名前を公表しますが、無神経なメディアが配慮するとは思えないので、今回は教育委員会が公表していないのだろうと思われます。それも適切でしょう。被害者がいる犯罪ではないですから。

生中継ではなく、動画の投稿ということで、刑法174条ではなく、175条の「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列」(記録という言葉が重複しているのは「電磁的記録に係る記録媒体の陳列」の略だからです)の適用ですが、摘発の段階では2本だったのに、取り調べが進んで、約20本に増えてます。他の報道によると、これとは別に生中継もしていたらしいのですが、生中継も同じ容疑で立件できるはず。

逮捕されたのは6月24日で、懲戒処分まで2ヶ月以上かかったのは、間に夏休みが入ったことも関係しているかもしれないですが、懲戒にする条件として「本人が容疑を認めた」「起訴された」などの条件を満たす必要があるためでしょう。手続きが面倒くさいのは当然。

他の記事でもそうなので、おそらく発表もそうなのだと思うのですが、なにをもって懲戒免職になったのかわかりません。可能性はふたつあって、ひとつは副業禁止規則に反したこと。もうひとつは業務外の非違行為に反したことです。あるいは両者を併せて免職か。

確認してみましょう。

長崎県のサイトの教育委員会のサイトではこの件についての発表はなし。長崎県教育委員会の教職員の「懲戒処分の公表基準について」には 「公表は、原則として県政記者クラブに対する資料提供により行う」とあるので、インターネットでの公開はないようです。

 

 

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