松沢呉一のビバノン・ライフ

CDもカラオケも衰退し、YouTubeが支配する—メディアをめぐる不可解な現実[7]-(松沢呉一)

音楽が世代共通の体験になりにくくなった—メディアをめぐる不可解な現実[6]」の続きです。

 

 

 

1990年代はカラオケが共通体験に

 

vivanon_sentence前回見た私の個人史は、「情報の量」で見ると、「音楽の情報量が増えると、全体をカバーすることができなくなり、好きな部分に興味が集中していき、他が薄くなる」ということです。当たり前と言えば当たり前。

それまでは日本で発売されるおもにブリティッシュ・ロックのレコードを聴いていればよかったのに、フランスもイタリアもドイツも聴くとなれば、何倍もの時間と金が必要になります。時間も金も限界がありますから、増大する情報に対しては切り捨てる部分が増えていく。

それでもラジオやテレビを通して「売れているもの」は自然と聴き覚えてしまっていたのが、リスナーの母数が多いラジオでは満足できずに聴かなくなり、テレビも観ないことになって、ぼんやりとしか意識しなくなります。

1980年代からは、地上波以外のCATVや衛星放送で音楽専門チャンネルができます。また、J-WAVEのような音楽垂れ流しを売りにするFM局ができてきて、音楽が好きな人たちはそちらに移行。

また、1990年代になるとカラオケボックスがボコボコできて、高校生たちは学校の帰りに頻繁にカラオケに行っていて、そのためにヒット曲は熱心にチェックし、小室ファミリーやモー娘。はたいてい歌えたものです。そのため、シングルCDが記録的なヒットになってました。この頃から、歌えない洋楽は人気が落ち、J-POPなるものが人気に。

曲はラジオやテレビよりも、カラオケボックスで誰かが歌うのを聴いて知ることも増えて、カラオケボックスが新曲のプロモーションの場にもなっていきます。「カラオケ館ご利用の皆さん、こんにちは」とミュージシャンが新曲の宣伝を画面でやる。カラオケがこの世代の共通体験です。

1998年がCD売り上げのピークで、国内生産枚数は4億5千万枚に達してましたが、以降はひたすら減少です。

以下はここ10年の数字。

 

日本レコード協会「日本のレコード産業2019」より

 

 

生産数で、ピーク時のちょうど3割まで落ちてます。パソコンからもプレイヤーが消えて、聴く方法が家にない人も多いでしょう。

 

 

カラオケも衰退傾向に

 

vivanon_sentenceカラオケも当時ほどは普遍性のある体験ではなくなってきているようです。

 

 

全国カラオケ事業者協会「カラオケ白書2019」の抜粋より

 

 

カラオケボックスのルーム数も利用者数もピーク時に比して2割程度減ってます。これはもっとも頻繁にカラオケを利用してきた十代の人口が減少しているためでもありますが、それ以上にカラオケは衰退傾向にあります。

皆が知っていて、皆が歌えるヒット曲というのが減っているためでもあります。若い世代でもラップは苦手、英語曲は苦手というのがいますから、昨今のヒット曲はカラオケの共通体験になりにくい。だいたい男のヴォーカリストはキーが高すぎるわ。

アニメオタクだとアニソン、アイドルオタクだとアイドル、KポペンはK-POPといったように、趣味の合うグループ内の共通体験はあるとして、YouTubeやSoundCloudで音楽を聴いていると、どんどん個人化していきます。それでもなんとかJ-POPが共通体験になっているってところでしょうか。

 

 

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