マゾとして生きる—『マゾヒストたち』(11)-(松沢呉一)
「現実とファンタジーの区別ができない人たちの弊害—『マゾヒストたち』(10) 」の続きです。
このシリーズは全体の流れや構成を考えて始めたわけではないので、話があちこちに飛びます。ご了承ください。
マゾの人間関係
『マゾヒストたち』にインタビューを掲載した18人のうち、1名はお亡くなりになったようです。SMとは関係がなく、病気です。具体的にどこが悪いのかまでは聞いていないですが、インタビューの段階でも体の調子が悪くて手術をすると言っていました。そのあとしばらくして亡くなったという情報が流れていたのですが、皆さん、マゾとしての交流があるだけですから、亡くなってもそのことを確認することは難しい。
この18人の中には横につながっていて、M男同士で友人づきあいをしている人たちもいて、その人たちだったら見舞いに行きそうですし、亡くなったら葬式にも参列するかもしれないですが、こういう関係ができている人たちは稀です。
SMクラブだと女王様を中心に線が多数広がっていますが、通常、線の先にいる人同士は交わらない。SMバーだと横につながるケースも出てきますが、店を離れてもつきあう人たちは少ない。
体が悪いと話していた人が携帯に出なくなり、そのうちつながらなくなって、亡くなったのではないかと語り合うだけです。ごくごく稀に家族がそのことを知っていて、亡くなったことを女王様に連絡してくれることがあったりしますが、100人に1人もないレアケースです。
あとの方々は健在ですが、現在70代も何人かいます。マゾは勃起しなくなっても楽しめますけど、どうしたって体力や意欲が落ちます。先日、子づくりに励んでいるとメールをくれたクニオさんも70代半ばですが、子づくりに励みつつ、ストリップ劇場やソープランドに行っているクニオさんは超人です。
マゾのパートナー
『マゾヒストたち』に登場するマゾの中には、パートナーは女王様だけで、結婚もしていないし、恋人もいない人たちも5人ほどいますが、残り13人は妻なり恋人なりがいて、彼女たちがパートナーのマゾヒズムを知っている人も4名います。インタビューの時点での話であり、正確にカウントしたわけではないざっくりとした数字ですが、「妻や恋人がいる率」は一般の人たちとそんなに変わらないのではなかろうか。
「パートナーのマゾヒズムを知っている」と言っても程度は違っていて、最初に肛門に腕を入れたのは妻だったくらいで、ゴン太さんの妻は相当のところまで知っています。しかし、彼女はそこに興味がなかったため、ゴン太さんは家庭外でマゾを実践。
クニオさんの妻もほとんどすべて知っていて、変態プレイにもつきあっていたのですが、愛妻は亡くなり、現在子づくりに励んでいるのは再婚相手で、彼女もすべて知っています。
クニオさんは「隠すからいけない」と言っていて、70代になった現在もなおソープランドやストリップに行っていることも隠していないはずです(再婚相手は30代で、その間にすでに子どもがいて、今は2人目を狙っている)。
この2人が突出していて、他に軽く妻や彼女が知っている人が2名いるだけです。
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