松沢呉一のビバノン・ライフ

政治や社会問題よりペットやグルメの話が好まれる構造—メディアをめぐる不可解な現実[11]-(松沢呉一)

データで確認するインターネット支配と既存メディアの凋落—メディアをめぐる不可解な現実[10]」の続きです。

 

 

 

知る欲求、調べる欲求は個人的趣味に対して発揮される

 

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「インターネットではフェイク情報が流通する」という事実とは矛盾しているようですが、NHK放送文化研究所世論調査部「情報過多時代の人々のメディア選択」では、「必要な情報を得るときは時間をかける」と答えた率は男女ともに若い方が高い数字が出ています。

なぜ若い世代の方が高いのかと言えば、若い方がインターネットを使うためだろうと推測できます。新聞とテレビに頼っている人がさらに詳しいことを知ろうとすると、雑誌や本を買うか図書館に行くしかない。対してインターネットであれば瞬時にできます。

しかし、この行動は当然自分の関心のあるジャンルでのみ発揮され、広く話題になる情報は、その分野に詳しくない人たちが食いついてきた結果ですから、大半の人は時間をかけずに流通させます。その結果がフェイク情報の流通です。

関心のあるジャンルは以下の通り。

 

NHK放送文化研究所世論調査部「情報過多時代の人々のメディア選択」より

 

 

若い世代ほど、「関心のある情報ジャンル」は、「政治・経済・社会」より「個人的な趣味」といったものに偏りがあります。10代では3倍くらい「個人的な趣味」の方が多いのはもっともかとも思うのですが、20代でも「個人的な趣味」が56%、「政治・経済・社会」が36%と、大きな開きがあって、60代とはきれいに逆転しています。

といった数字を見ると、すぐさま「最近の若いもんは」と言いたくなる人たちがいそうですが、この傾向は若い世代特有ではありません。

 

 

人が違うのではなく、道具が違う

 

vivanon_sentence情報過多時代の人々のメディア選択」の、インターネットによって社会への興味がどう変化しているのかについてのまとめは以下。

 

 

●「政治・経済・社会の動きを伝えるニュースはたまたま気づいたものだけで十分だ」(「受動的接触」派)が、 男女20代以下で5割を超えている。

●「自分の好きなものに対する情報や他人の意見は好意的なものだけ知りたい」(「選択的接触」派)は16~19歳で 6割、男女20・30代で40%を超える。

 

 

以下のグラフはこれをよく見せてくれています。

 

 

年齢によって顕著な差が出ています。これがインターネット(だけ)によってもたらされたものなのかどうかについてははっきりしないのですが、そういうこととして話を進めます。

インターネット利用者全体に言える傾向として、「自分にとって否定的なものは見ない。肯定的なものしか知りたくない」という特性が確実に強化されてきています。10代では「自分に好意的なものだけ知りたい」が「否定的なものでも知りたい」を大きく上回っています。10代のうちは社会に目が向きにくい傾向もありますから、年齢が上がるとともに是正される傾向はあるにしても、インターネット依存度はさらに強ますから、今後は若い世代から逆転していきそうです。

 

 

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