松沢呉一のビバノン・ライフ

陳彥霖の死と情報の隠蔽—10月前半の香港[中]-(松沢呉一)

覆面禁止法の愚とその効果—10月前半の香港[上]」の続きです。

 

 

 

陳彥霖の死

 

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中国政府、香港政府、香港警察の体質をよく物語る事件がありました。

デザインの学校に通う15歳の陳彥霖(Chen Yanlin)さんは、9月19日に、「家に帰る」と友だちにメールをしたのを最後に行方不明となり、捜索願いが出されますが、9月22日に魔鬼山近くの海で全裸の遺体が見つかります。

これが彼女であったことはすぐに確認できたはずなのですが、なぜか警察はそれを発表せず、インターネットで「あれは彼女ではないか」との声が高まりまり、さらに「逮捕されて警察に殺されたのではないか」との見方が広まります。

香港の新聞「蘋果日報」(Apple Daily)に対して、10月9日になってやっと警察は正式にこれを認めていて、彼女は逮捕された記録はなく、体に外傷はなかったと発表(その記事はこちら)。

ここまで出ている情報によると、彼女は何度かデモに参加していたことが確認されているのですが、頻繁に出かけていくほど熱心ではなかったようです。9月19日は木曜日で、この日に警察に捕まった可能性は低いのではなかろうか。

しかし、彼女には自殺する理由は見当たらず、遺書もありませんでした。また、幼少期から水泳を習い、とくに飛び込みを得意としていたため、誤って転落したとしても溺死することは考えにくいとも言われています。それでも溺死する時は溺死するでしょうが、そもそも全裸で誤って転落する状況は考えにくいし、ナチュリスト・ビーチじゃないんですから、全裸で自ら泳ぐことも考えにくい。

そして、なにより警察の対応が疑惑を深めました。さっさと身許を確認して発表すればよかったのです。

 

 

不審死は警察の秘密主義が生んでいる

 

vivanon_sentence不審死はこれだけでなく、陳彥霖さんではない、女性と思わしき水死体が引き上げられた際の動画が撮られていて(警察ではない人が岸から撮ったもののようで、ネットで公開されています)、服が黒だったため、プロテスターではないかとの指摘がなされています。

デモに参加していなくたって黒い服を着ていることはあるでしょうし、濃い色の服であれば濡れて黒く見えることもあります。仮にプロテスターだとしても、それだけでは警察が殺したとは言えないのですが、そういう疑いがすぐに出るくらいに警察に対する不信感が強いのです。

また、8月31日の太子駅での騒動でも逮捕されたまま行方がわからなくなっている人がいるとも言われ続けています。メディアがこれを検証しているのですが、この検証でもはっきりしたことはわからないという結論でした。

はっきりしたことがわからないってことは殺されている可能性は低いと思われ、警察だけでなく、負傷者を搬送した消防署も否定しているのですが、この噂が消えないのは理由があります。

地下鉄構内の防犯カメラの映像があるので、それを確認すればわかるはずなのですが、警察はこれを公表していません。

この騒動は、プロテスターたちが、それに異を唱える乗客と小競り合いになり、煙幕を車内に投込んだことがきっかけであり、その部分を含めてすべて映像を公開すればいい。この時は警察によるひどい暴行がなされているので、その点で警察は都合が悪いのだろうと思われますが、映像を公開しないために逮捕者を殺害している疑惑は消えないのです。

 

 

 

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