香港政府が狙う情報統制—10月前半の香港[下]-(松沢呉一)
「陳彥霖の死と情報の隠匿—10月前半の香港[中]」の続きです。
次に香港政府がやってくること
「法律を作ればいい。効果がなければもっと作ればいい。それでも効果がなければ重罰化すればいい」という発想はナチスそのものです。全体主義はどこもそうなる。
2019年10月14日付「BBCニュース」
ネパールを訪問中の中国の習近平国家主席は13日、中国を分断しようとする者は「体はつぶされ、骨は粉々に」されると警告した。習主席は特定の地域に言及していないが、反政府・民主化デモの続く香港への警告と受け止められている。
脅しに過ぎないとも言えますが、現にチベット人やウイグル人にやっていることを香港でもやってやるという宣言です。すでにウイグルに存在していると言われる、法的手続きを経ずに入れられる収容所を香港にも作りたいんじゃなかろうか。
香港政府がこれに歯向かうことはできないですから、とりあえずは「雨傘禁止法」じゃないですかね。覆面禁止法のような法律だって実行したわけですから、これだってやりかねない。どんなに豪雨でも、デモで使用していいのは透明ビニール傘だけとか。
香港にも透明ビニール傘はあって、早い時間帯のデモではたまに見かけますけど、夜の部を担当するプロテスターたちはビニール傘を使ってません。催涙弾やゴム弾が突き抜けるし、火がつきやすいのだろうと思います。機動隊を殴る武器としても、ドアを閉鎖するつっかえ棒としても弱すぎます。透明では、悪いことをする際に隠すこともできません。この法律を通せば、警察はさらに片っ端から捕まえることができます。
「雨傘禁止法」は私の思いつきですが、報道を見ていると、このあと香港政府がやろうとしていることは情報統制だと言われています。中国全土でやっていることを香港にも適用したい。
前回見たように、今現在でも香港警察は情報を出したがらない。これを徹底したいのだと思います。
HKマップ・ライブ
情報統制はすでに始まっていて、警察はいわば監視役であるメディアを相当に嫌っていて、報道陣に対する威嚇、持ちものや身分証の検査などの嫌がらせを繰り返し、しばしば催涙スプレーを報道陣に向けて使用しています。とくにカメラマンはできればゴーグルを使用したくないでしょうから(とくにメガネをしている人)、直撃をくらうとひとたまりもない。催涙弾を意図して報道陣に向けて発射していると思われることもあって、負傷した報道陣は軽く二桁になっているでしょう。
また、AppleがApp Storeに出していたアプリHKmap liveに対して、中国政府はAppleに圧力をかけて非公開にさせています。
これはアプリで集積した情報を地図上に表示するもので、以下はウェブで公開されている地図です。
これを見ると、どこに機動隊がいるのか、どこで衝突が起きているのか、どこを警察の車両が走っているのかがすぐにわかります。プロテスターたちはこれを見て行動しています。私も中継とともにこのページを常に開いてます。
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