松沢呉一のビバノン・ライフ

デンマークでボルノの完全解禁が実現してから50年—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[16]-(松沢呉一)

川崎市市民ミュージアム浸水から考える春画—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[15]」の続きです。

 

 

 

ビジネスとして「よかった時代」に規制は強まった

 

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SM雑誌を筆頭としたいわゆるマニア誌がもっとも売れていたのは1990年代です。マニア雑誌だけの貢献ではないですが、この頃、エロ系の出版社は次々と自社ビルを建てています。

SMが一般メディアで取り上げられ、今まで扱っていなかった書店が扱い、今まで買っていなかった人たちが買う。話題になっているために、その内容と合致する趣味がない人たちまでが「どんなもんだろう」と思って買って、自分自身が興奮するわけではないままに、好奇心から買い続けたり、「面白い書き手やイラストレーターが出ている」ということで買い続けたりもする。

実際、マニア雑誌は、マニアの読者を裏切らないように丁寧に作られていて、マニアじゃなくても楽しめます。むしろマニアじゃないからこそ、発見があることが多いものです。

映画や小説、マンガといった表現のみならず、音楽やファッション分野にもSM的なものが浸透していった時代です。

多くの場合、出版社としては規制が強まっても、売り上げが伸びた方がいいってものですから、望ましき時代の到来。

しかし、この辺の流れは『マゾヒストたち』の後書きでもざっと書いたように、また、前回見たように、2000年代に入ってSMクラブやSMバーが摘発される例が出てきます。

規制が理由ではないですが、エロ雑誌はDVDをつけないと売れなくなり、やがてはDVDをつけても売れなくなり、重要な販路であった駅前の小さな書店が減り続け、インターネットに食われて、あっという間に部数が減って、続々廃刊されていきます。

1990年代を見た時に、「ビジネスとしては歓迎すべき時代」でありましたが、「表現としては不自由な時代に入りつつあった」とも言えます。

ゲイ分野でも、ゲイバーが風営法違反で摘発されたり、ハッテン場が公然わいせつで摘発されるようになったのは、ここ10年ほどのことであり、LGBTが認知されるのと軌を一にしているようにも見えます。

「だから、いつまでも日陰者でいろ」というのではなく、反動みたいなものも起きるので、こういった派生効果を意識しておいた方がいいって話。

前々回出てきたラバー・フェチの図版を検索してきた時に見つけたジャケットです。『マゾヒストたち』に出ているレインコート・フェチが最近はゴム引きのレインコートがなくなってきているという話をしています。ネットで見ても、古い時代の写真か、フェチ向けの写真しか見つからない。ゴムっぽくてもビニールです。ここに出したのは英Dsquared2(ディースクエアード)のジャケット410,231円也。これはたぶんレザーですが、ウエストを思い切り絞っているため、ラバーフェチ臭さがあります。スカートも皮の方がいいけれど、上下揃いでの販売と誤解されますから、わざと揃えてないのだろうと思われます。

 

 

今年はポルノ解禁から50年

 

vivanon_sentence「マーケットが拡大すると規制が強まる」という話とはまた別ですが、「規制とビジネスとの関係」は、ポルノ解禁で顕著に見られます。

1967年にデンマークで文字のポルノが解禁され、1969年に同国でヴィジュアルも解禁されて以降、北欧諸国でポルノが解禁され、それが西側ヨーロッパ全体に拡大し、北米にも拡大していきます。

以下の記事はデンマークで完全なポルノ解禁(文字も写真も映画も)が実現して50年を伝える内容です。

 

2019年5月31日付「THE LOCAL

 

ここに書かれているように、ポルノ解禁は性解放の動きとリンクしていました。ポルノ産業が主体的にそれを求めた側面もあったかもしれないですが、広い意味での検閲を拒否し、表現の自由を最大限確保する勢力の働きかけの方が大きかったのです。

この検閲をなしてきた根拠は道徳です。性をいかがわしいものとして隠蔽しておきたい道徳によって表現は規制され、道徳によって婚姻外セックスや同性愛など反道徳的とされる性行為も規制されてきたことに対して異議を唱える動きがそれらを乗り換えていきました。

 

 

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