松沢呉一のビバノン・ライフ

少しも話題にならなかった「おもいッきりテレビ」のやらせ告発-[ビバノン循環湯 547] (松沢呉一)

20年くらい前の原稿です。詳しくは「テレビでやっていいこと・悪いこと—少しも話題にならなかった「おもいッきりテレビ」のやらせ告発(の予告編)」を参照のこと。

 

 

 

恒常化するテレビのやらせ

 

vivanon_sentence「やらせ」と言えば、古くはテレ朝「アフタヌーンショー」のリンチシーンが知られるが、自殺者がでるほどの陰惨なあの事件以降も、とてもやらせが減っているとは思えない。

ここ数年に限ってみても、フジテレビ「愛する二人別れる二人」、TBS「ガチンコ!」「さんのまからくりTV」、日テレ「進め!電波少年」(現「進ぬ!電波少年」)などのやらせが報道されたことが記憶に新しい。「さんまのスーパーからくりTV」に至っては、いくつものコーナーで素人に見せかけたエキストラが登場しているだけでなく、「ご長寿早押しクイズ」では、編集によって、あたかもボケ老人かのように見せるテクが使用されていたことが週刊誌に告発されている。

しかし、やらせが発覚しても番組は継続されており、「アフタヌーンショー」のやらせが社会問題となって、出演者のタレント生命までが断たれた時代とは隔世の感がある。

以前から指摘されているように、テレビからやらせがなくならないのは、苛酷な下請け構造にある。系列子会社からさらに下請けの制作会社、リサーチ会社、フリーに仕事が回され、局員とは比較にならない安いギャラで、短時間で仕事をこなさなければならず、ネタは雑誌から拾って自分らで調べたかのような振りをする。人を探す暇もないので、エキストラを抱えている会社に頼んでやらせをやる。

いざやらせが問題になると、局はトカゲの尻尾切りをして一件落着。

この構造が改善されていないのだから、やらせがなくなるわけがなく、むしろ下請け構造が固定し、やらせも恒常化したと言っていいだろう。

※2016年12月29日「日刊サイゾー」より、「ご長寿早押しクイズ」が復活した時の記事

 

 

演出の範囲か、やってはならないやらせか

 

vivanon_sentence故・ナンシー関が、TBS「サバイバー」で、あまりにタイミングよくカメラが映像を押さえていることに疑問を投げかけ、やらせであることを示唆していたが、テレビの現場に詳しくなくても、テレビを見ていれば、「これはやらせだろうな」と気づくことがよくあるくらいにやらせはバラエティ番組ではなくてはならないものになっている。

やらせがもっとも頻繁に見いだせるのは、一般視聴者が参加する形になっている番組だ。本物の素人を出していたら番組が面白くならず、また、収拾がつかなくなりかねない。そこでエキストラ専門の「仕出し屋」に依頼する。バイトでエキストラをやっている主婦を主婦として出すのであれば、ウソとは言えないため、少しは良識が残っているテレビ関係者であったとしても、抵抗感は薄いし、その証言に虚偽がない限りはさほど問題はないとも言える。同じ内容なら、しゃべりが上手な人を使いたいのはもっともであり、適切な人選をするための演出の範囲かもしれない。

日テレ「踊る!さんま御殿!!」では、視聴者からの投稿をきっかけに各コーナーが進行していくが、投稿者の写真のほとんどは何故か顔を伏せていたり、顔が判別できないくらいの遠景になっている。出たがりの視聴者があんなことをするとは思えず、作家が書いたものが多いのではないか。

実際に視聴者が送る投稿だって内容が本当かどうか確認するわけではなく、それをプロの作家が代行しているだけだと言えなくもない。ただの笑いをとるためなのだから、報道番組ならいざ知らず、バラエティ番組であれば許容範囲という意見もあるだろう。

では、以下に紹介する例はどうだろう。

※2019年10月21日付「毎日新聞」 昨日更新してから気づいた報道。

 

 

「おもいッきりテレビ」の電話相談に三度出演した声タレ

 

vivanon_sentenceAさんは30代の女性で、主婦に絶大な人気を誇る日テレ「午後は○○おもいッきりテレビ」など多数の番組に出演してきた。しかし、顔を見たところで、誰一人わかるまい。というのも、彼女は声のみの出演だからだ。姿を出したこともあるが、すべてモザイク越しの出演だ。

『おもいッきりテレビ』の身の上相談のコーナーに三度出てますよ

あの人気コーナーも、仕込み屋によるやらせだったのである。隣人や家族に知られてはまずい悩みをテレビ番組に相談するだろうかと多くの人が感じるところだが、やはりそうであったか。

 

 

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