松沢呉一のビバノン・ライフ

規制の中で生じたビジネスや感覚が足を引っ張る—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[19]-(松沢呉一)

性教育にポルノ導入を検討するデンマークと未だ性器を出せない日本—そろそろ刑法174条(公然わいせつ)と175条(わいせつ物頒布)を見直しませんか?[18]」の続きです。

 

 

 

規制の中でうまくやってきた人たちは現状維持を願う

 

vivanon_sentence規制の中でビジネスを成立させてきた人々は、規制を外すことを恐がります。前に説明したイギリスの事情の中で発達してきたラバー表現でメシを食ってきた人たちは、今になって規制が外れると、このマーケットが崩れてしまうことを恐れるでしょう。それでも表現者たちは表現が自由になることを歓迎するのも多いだろうけど。

日本では風営法が厳しく、条例も厳しいため、ほとんどの自治体で、店舗型の性風俗店を新規で出すことができません。また、店舗の建て直しができず、改装さえも制限がつき、建物の老朽化とともにソープランドや店舗型のヘルスは消えて行く運命ですが、だからといってこれらの業種の人たちが風営法改正を求めることはまずありません。規制を外して、新規で出せるようにすると競争が激化するためです。

日本のエロ・モデルの中には、性器にモザイクが入ることが前提になっているために仕事ができているのがいて、モザイクなしの映像が流出することを嫌います。流出を嫌うのは、正規ルートの数倍の人が見てしまうために身バレを恐がるのがいる一方で、「性器だけは見られたくない」というのがいるわけです。

少数派なので、全体に影響を及ぼすほどではないですが、性器を見せないところで発達してきた作法やビジネスのモデルが崩れることを恐がる人たちは少なくないはずですし、先行した各国の事情を踏まえると、売り上げが落ちることを恐れる人もいそうです。

モザイクを入れる仕事を請け負っている会社や個人も反対しましょう。

だいたいヤクザは人が手をつけないところに手をつけます。それまでは関与しなかった性風俗にヤクザが入り込むようになるのは売防法がきっかけです。ヒロポンが合法だった時代は製薬会社が出していたわけですが、これが禁じられて以降はヤクザのシノギになる。リスクがある分儲かる。

エロ配信で逮捕された人たちはえれえ儲っていて、儲っているから目をつけられたわけで、これが合法になったら参入する人が増えて儲からなくなると恐れます(前から言っているように、さまざまな要因が関わってくるため、長期で見た時に、規制された中で、違法なことをやる方が儲かるとは一概に言えない。摘発さればいきなり収入が断たれて失職しかねないわけで)。

そういった損得勘定によって、現に今それでメシを食っている業界としては規制反対とは簡単には言えなくなります。

※「モザイク」で検索して出てきた『世界のモザイク』。「えっ、国によってモザイクのかけ方にそうも違いがあるのか」と思ってしまいましたが、モザイクタイルの本です。タイルが好きな私としてはこの本も気になります。

 

 

最近のヤツらは気楽にカミングアウトしすぎ

 

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損得を計算しているのではなく、自身の美学としても反対する人たちがいます。

もうずいぶん前のことになりますが、ゲイの存在が女性誌などに取り上げられるようになって、オーバーグラウンドで語られるようになってきた頃に、週刊誌の仕事で、斯界をリードしてきたと言っていい人物にコメントをもらいに行ったことがあります。

しかし、彼は旧世代の人で、「最近のヤツらは気楽にホモであることを言い過ぎる」と新しい動きを批判的に語っていたことに驚きました(ホモの時代の人ですから、この言葉遣いに他意はありません)。三島由紀夫などの名前を具体的に出して、昔の人たちは決してそのことを公言はしなかったが、だからこそ、優れた文学作品、芸術作品を世に出せたのだと。

そのことを公言したって素晴らしい作品を発表しているアーティストはすでに英米では活躍していたのだから、三島由紀夫は同性愛者であることを隠していたから素晴らしい作品を書けたとは言い切れない。

 

 

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