松沢呉一のビバノン・ライフ

壁を超えて生まれる共感—BLファンもゲイも女風利用者もヤリマン・ヤリチンも風俗嬢も売り専も集う蒼武蔵のイベント-(松沢呉一)

BLとAVと女性客—『マゾヒストたち』[無料記事編 3]」および「ついに時代はここまで来た—女風(じょふう/女性向け性風俗)の隆盛とその背景」の続きです。

 

 

高円寺パンディットが輝いた日

 

vivanon_sentence昨夜、あの薄汚い高円寺パンディットが、光り輝くパラダイスに見えました。数日前にお伝えした蒼武蔵のトークイベント「ROOTS」のことです。

行くかどうか私は直前まで迷ってました。客の大半は女性だと思われて、そういう場所に汚いオッサンが行くのはためらわれます。冷たい視線を向けられるだけでなく、男がその場にいると、女の客は自分を晒すことができなくなってしまうことがあります。そうなると申し訳がない。

ちょうど今学園祭シーズンですけど、生徒たちが楽しむ学祭のダンパに、教師や親が監視しに来ていたら楽しめなくなるのと同じです。私は監視するつもりはないのですが、そこでの私は教師や親と区別がつかない。

しかし、Amazonで、『マゾヒストたち』の順位が見る見る上がって、最悪の事態は避けられたどころか、好調の域に入ったことに気分をよくして、それとこれとはなんの関係もないにもかかわらず、パンディットに行くことにしました。

 

 

蒼武蔵がゲイビデオに出たわけ

 

vivanon_sentenceちょうど椅子席が埋まる満員状態で、35人の客のうち、男の客も後ろの方に10人くらいは来てました。知人だったり、ゲイビデオ関係者だったり、その愛好者だったりでしょう。私はさらに後ろの目立たないところで見ていたのですが、次々と驚くような光景が繰り広げられました。

前半は蒼武蔵のここまでの軌跡を自身が説明していきます。40代になってゲイビデオに出るに至るにはそれ相応の紆余曲折があったことが語られていたのですが、ヘテロなのになぜゲイビデオなのかについてはさらりと語られていて、意味がよくわからなかったかと思います。性の境界線がゆるゆるの私でもよくはわかりません。

女優と男優がからむヘテロ向けAVでの男優は添え物です。主人公は女優であり、ギャラは大半をあちらがもっていき、男優はその数分の1でしかありません。パッケージにも女優の名前が大きく出て、男優の名前が出るとしても小さく出るだけ。トップクラスの男優でもそうですから、まして新人となると、交換可能な素材でしかないので、現場での扱いも天と地です。

相手が女王様でもケツにディルドを入れられるのはNGの男優は多いものです。身体への負担が大きく、翌日に響くため、SM自体NGが多くて、SMはできるとしても、痕が数日残る縄は鞭はNGが一般的で、だから、SMの撮影では本物のマニアさんを起用します。これについては『マゾヒストたち』を参照のこと。

仕事にNGはなく、ゲイビデオでも引き受ける男優もいますが、ヘテロで自らゲイビデオの世界に飛び込むのは相当に珍しいかと思います。

彼は女優がメインのAVではなく、自分が主人公になれるゲイビデオに出たと言ってました。そのために、尻も自分でディルドを買って来て拡張。尻の拡張は筋肉を鍛錬するのと似ています。身体の可能性を拡大する行為です。

その境界線を抵抗感なく颯爽と乗り越えていく様が彼の特徴です。

 

※以下はボディビルの大会風景

 

 

SMと自己解放

 

vivanon_sentence彼は青山夏樹さんがTwitterで椅子などのブツを縛っている写真を出しているのを見て、自分もこんな風に縛られてみたいと思って、面識がないのにコンタクトをとって、縛られた時に「自分が解放(開放)されて自然に涙がボロボロ出てきた」と語ってました。これぞSMの魅力です。

 

 

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