女王様をやることで自由になる—『マゾヒストたち』[無料記事編 13]-(松沢呉一)
「ROYAL BLUEオープニング・パーティで見た幸福な人々—『マゾヒストたち』[無料記事編 12 ]」の続きです。
ステップアップ大作戦
前回に続いて、ROYAL BLUEのオープニング・パーティより。
この日は、夏樹さんと一緒に「スナイパーEVE」でやっていた連載「ステップアップ大作戦」を繰り返し思い出してました。当初は別の女王様とやっていたのですが、彼女は失踪したため、第二期は夏樹さんと組みました。
私の知り合いだったり、編集者の知り合いだったり、どっかで一回会っただけの人物に目をつけたり、さまざまなルートで未経験の女子を連れてきて、夏樹さんが女王様に仕立てていく趣旨の連載で、この連載は楽しかったなあ。
条件は一度もSMをやったことがないことだけです。謝礼が出るので、バイト気分もあったとは思いますが、一切興味がなければ断ってきますし、雨宮まみは「私はMだから」という理由で断ってきました。
よって最低限の興味のある人たちですし、私なりに「イケそう」と見抜いた上で選択していたので、ランダムに選んでいたわけではないのですが、彼女らは前提になる知識がほとんどないまま、約束の日にやって来ます。それ以前に夏樹さんと面識があるケースも一回だけあったと思いますが、あとは夏樹さんと彼女らは初対面です。
最初は当然戸惑うのですが、2時間もあれば大半は立派な女王様になります(毎回3時間から4時間くらいかけてました)。
この時に、何がきっかけでスイッチが入るのかは人それぞれで、鞭で高揚するのもいました。鞭は見る見るうちに上達することが自分でもわかるので、達成感があるのです。
緊縛に興味を持つのもいましたけど、緊縛は時間がかかり、頭脳の作業に偏るので、これでガラリと意識が変わることはあまりないものです。その日のうちに吊りができたりはしませんし。
毎回、最初は私服で、途中から用意してあったボンデージやブーツに着替えるのですが、それで気分が女王様になるのもいました。
そして、もっとも多かったスイッチは前立腺であり、ペニバンでした。
私が「前立腺の魔術師」と命名しているくらいで、夏樹さんは前立腺への刺激が得意中の得意です。前立腺マッサージはどっちかと言えばSMよりM性感のイメージが強いですけど、SM的にも大きな意味があります。前立腺は位置的にも器官的にも自分でコントロールがしにくくて、女王様に委ねるしかない。ここでトコロテンをやると、白旗を上げて屈服するしかなくなって、「どうにでもして」って気持ちになります。
トコロテンについては「ビバノン」のどっかに説明が出ていると思いますが、前立腺を刺激することで前立腺液が出ることです。これに精子が混じって精液になりますが、トコロテンは精子なしの前立腺液です。奥から押し出されるようにトロっと出るのでトコロテンです。これでイクのは女がGスポットでイクのと同じようなものです。
今まで知らなかった男の体のメカニズムを知ることで好奇心が刺激されることもあって、毎回、前立腺講習はしてました。
女王様を体験すると強くなる
ほんの入口ではあれ、まったくの素人女性でも、短時間にSMプレイができるようになるのは、チンコのおかげです。鞭で叩いているのに、この人は勃起しているぞと。相手がそれで気持ちよくなっていることがチンコで判断できるので、ただの暴力ではないことがわかって、安心していたぶれます。もちろん、声の調子や表情からも相手の様子は読み取れるのですが、誰の目にもわかりやすいのはチンコです。
前立腺を刺激している時は勃起しなくなることも多いのですが、それでも汁が出ます。男が汁を出している時もまた気持ちがいいのだと大人の女はたいてい知ってますから、チンコと汁にいざなわれて、女王様になっていくのです。
毎回ペニバンもやっていて、これは私がペニバンが好きなためですが、ペニバンをつけて挿入すると、人が変わるのもいました。「オラオラ」になって、「どこがいいのか言ってみろ」とオッサンみたいなセリフも出てきます。自分が言われていることの応用です。
つまり、これらのプレイは、自分が主体となって男をコントロールする技術であり、ここで彼女らは目覚めを得ます。
夏樹さんとのこの連載は15回くらいやっていたかな。その中には、この経験がきっかけでSMパーティに出入りするようになったのや、プロの女王様になったのもいます。もともと女王様になりたいと思っていたわけではなくても、S性は潜在しています。S性とまでは言えずとも、言葉にせよ、行為にせよ、女がやってはいけないとされることをやると解放されて、見ているこっちも気持ちがいい。
ちょうどお嬢様女子高生が学外で「おまえ」という言葉を使うのが嬉しいようなものです。
「女王様になって私生活ではどう変わったか」を聞くと、少なからぬ女王様が「強くなった」と言います。女王様が強いのは当然として、女王様じゃない場面でも言いたいことが言えるようになったと。女という枠組を壊すには女王様になるのがてっとり早い。
偏差値高い系の女子校では、それを壊すために動物の解剖をやるわけですが、女王様になる授業も実施するといいと思います。
※無料公開だと誰が見るかもわからんので、顔もやっていることもわかりにくい写真しか出せないっす。
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続きます。
以下はテンプレです。
世界はマゾでできている—松沢呉一著『マゾヒストたち』(新潮文庫)発刊記念
マゾしか出ません!!
本年5月をもって休刊となった「スナイパーEVE」で連載していた「当世マゾヒスト列伝」が『マゾヒストたち』として新潮文庫に登場。
18人の選び抜かれたマゾ男の精鋭たちのインタビューとコラムで構成された希有なM男たちの肖像。
その発刊を記念して、マゾヒストたちの生の声を聞きます。
女王様がいてのM男ですが、女王様は出ません。
M男が主人公のイベントです。
【出演】
松沢呉一(生活マゾ)
【スペシャルゲストのマゾたち】
クニオ(露出・身体改造・性豪・包茎自慢の変態)
山田龍介(元キックボクサー・ヤプーズマーケット代表)
紅葉(盲目のピアニスト・マゾ)
予定していたゴン太さんは欠席となりました。その代わりに変態界の大物が急遽出演決定。『マゾヒストたち』には登場しない人物ですので、当日までお楽しみに。
※本イベントは16禁です。15歳以下の方はご遠慮ください。
【会場】
☎︎090-2588-9905
【日時】
2019年11月17日(日)
開場/ 13:00
開演/ 13:30
2時間半程度を予定しています。
【参加料金】
<お得な本付き料金>
前売 ¥2,500 当日 ¥2,600
<本なし料金>
前売 ¥2,000 ¥当日 ¥2,500
※いずれもドリンク別です。
予約はパンディット(二種の予約は入口が別になってます)
またはFacebookのイベントページで「参加予定」をクリックするだけで予約扱いになります。当日、どちらかを選択のこと。
ゲストのプロフィール
クニオ 思春期から裏山でセックスを始め、十代でストリップ劇場の楽屋まで出入りするように。以来、全国のストリップ劇場を回り、同時にトルコ風呂にも行くようになった。自身がマゾという自覚はないが、性器に傷をつけて黴菌をつけて化膿させるのが好きで、SMショーにもMとして出演している。自身が身体改造マニアという自覚はないが、ピアスを体中に入れて銭湯に通っている。包茎が自慢で、包茎サークルのメンバーでもある。
山田龍介 ブロのキックボクサーだったが、マゾに目覚めて、名古屋の北川プロのビデオにデビューし、多数のビデオに出演。最多本数に出たマゾ男優かもしれない。結婚し、子どももいたが、家庭を捨てて、マゾとして生きることを決意して上京。浅野ナオミ女王様の奴隷として軟禁生活を送ったあと、監禁専門ビデオメーカー・ヤプーズマーケットの代表に。同社の出演者はヤプーと呼ばれ、経営者・制作者にしてヤプー0号として出演もしている。
紅葉(もみじ) 幼少期に事故で両眼を失明。盲学校に通いながら、ビンタをされたい願望が高まる。数学専攻で国立大学に進んだあと、ピアノの勉強のため、ポーランドに留学。帰国後、自身の欲望を抑えられず、単身、SMクラブに乗り込み、数学、ピアノに続いてマゾとしての実践を開始、V&Rの作品に出演してマゾ男優としてデビュー。本に掲載されたインタビューの段階では独身だったが、その後、結婚。当日はマゾの結婚生活についても聞けるはず。