日常に潜む非日常の落とし穴—台風19号の被害でマゾになる[2]-(松沢呉一)
「トランクルームの本が大量に濡れていた—台風19号の被害でマゾになる[1]」の続きです。
保険で補償されるのはいいのだけれど
本が濡れていることを発見した翌週、倉庫会社に電話したら、やはり保険金が出ると言われました。
「段ボール代まで全部出ます」
段ボールはどっかでもらったものですから、そんなもんはいいとして。
でも、保険の適用を受けるためには書類を作らなければならないのが面倒臭い。全部箱から出して被害リストを作り、写真を撮ると、一日では終わりそうにない。横山大観の絵を持ってなかった分、よかったとするしかないか。
エロ本も当然混じっていて、保険会社にエロ本のリストと写真を送っても、価値を認められないんじゃないかとの不安もあります。
よーく考えると、それらの本を置いておくために金を払っていたのだから、その割合に応じて、トランクルーム代を返却してもらうのがスジなのではないかとも思うのですが、考えるのが面倒なので、そっちはまあいいか。
倉庫会社は、台風のあと、全倉庫をチェックして、そのトランクルームで浸水を確認していたため、水は取り除いたそうですが、私が見たあとですから、さらに水は引いていたはずで、被害が出たとは思っておらず、そのトランクルームで被害申告があったのはこれが初めてだそうです。
たまたまのタイミングで私は気づいたからいいようなもので、同じトランクルームでも、入れっぱなしの人でまだ気づいていない人もいそうです。
※表紙がくっついたエロ本
トランクルーム幻想が崩壊
倉庫会社の人は親切に対応してくれて、そこに不満はなし。
原因もわかっておらず、よってまだ対策もなされていないため、他のトランクルームに移動してもいいということだったのですが、近隣に空きはありませんでした。当面あんな大雨はないでしょうけど、どうせ今後も同様の巨大台風が来ますから、来年の台風シーズンまでには考えた方がよさそうです。
トランクルームを借りるんだったら地下は避けた方がいいですが、地下じゃなくても漏水することはあるからなあ。異常気象に逃げ場なし。
段ボール箱ではなく、プラスチックケースに入れるか。高くするための台を置いている人もいると倉庫会社の人が教えてくれました。横山大観の絵を置く場合はそうします。
今回はせいぜい1センチか2センチ程度の浸水だと思うので、すのこでも防げたかもしれない。被害リストを作るため、どのみち一度はすべて外に出さなければならないので、この機会にすのこを買ってくるか。でも、次回はもっと漏水するかもしれないし。
今回のことでトランクルームに入れておけば安心という思い込みが壊れ、トランクルームを借り続けることに意味があるのかどうかの再考ができるいい機会ととらえることにしよ。
ベネチアが水没しそうだとか、南太平洋の島々が消えただとか、ヒマラヤの雪や氷が溶けて洪水が起きそうだとか、遠いところの記事を読んでいるうちに、私が借りているトランクルームまで温暖化が押し寄せてきて、とてつもない危機が世界を襲いつつあることをやっと実感しました。
※梅原北明訳『さめやま』。箱にシミがついただけじゃなく、中の本が膨らんで外に出せない。
(残り 1620文字/全文: 2973文字)
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