なくてもいいようなものだけれど—名刺の機微[下]-[ビバノン循環湯 552](松沢呉一)
「オマンコを気持ちよくしてね—名刺の機微[上]」の続きです。前回同様、図版はStoryville NewOrleans Red-Light District 1897-1917より
葛飾区にて
続いての名刺にまつわる話。
都内の有名ソープにふらりと入った。ここは「若い素人」を売りにして人気のある店だ。知り合いでこの店の常連がいるし、風俗誌の表3や表4に1ページの広告を出しているので、前々から存在はよく知っているのだが、取材したことはなく、この街に来たついでに見ておくことにした。半分くらいは職業的な興味である。
指名用のアルバムを見ると、ほとんどの女のコに肩書きがついている。「現役学生」「看護婦」「OL」など。すべてが本当だとは思わないが、中には「元」になっているのもいる。ウソならわざわざ「元」とつける必要がないから、案外本当だったりするのかもしれない。
私はアルバムの中から、「人妻」と書いてある女性を選んだ。「人妻だから」ではなく、いい雰囲気だったのだ。
実物の彼女はちょっと疲れが見られるものの、やはりいい雰囲気。しかし、二十三歳というのはウソだろう。五歳くらい上かもしれない。問題なし。
私はさっさか自分で服を脱ぎ、彼女がそれをハンガーにかけたり、畳んでくれたり。かといって、かいがいして脱がしてくれるわけでもなくて、事務的なそっけなさだ。
バスタオルを私に渡し、彼女は風呂の湯を入れる。
「お湯が入るまで、ちょっと待っていてくださいね」
「じゃあ、乳でも揉んでいるか」
服を脱がすと、意外にも豊満な体つき。たぶん子どもはいないと思われて、さほど崩れていない。オッパイもEカップくらいありそうで、その分、自然な垂れ方はしていても、まだまだ張りがある。
ところが、下着を脱がそうとしたら、抵抗。
「恥ずかしいです」と、ここだけは自分で脱いだ。
全裸の彼女を後ろから抱きしめて、背中に舌を這わせる。
「あ、ダメ。背中はくすぐったい」
「じゃあ、ここは」と言ってクリを触った。
「そこはいいけど、まだ洗ってないから」
「でも、この前に洗ったでしょ」
「いや、出勤したばかりですよ」
この店は出勤時間がマチマチらしい。
「どれどれ」
彼女は足を広げた。
「味がしないですか」
「ちょっと塩味」
そういったら、すぐに体を離した。
「やっぱりダメです。シャワーのあとで、してください」
セックスしてないから子どもはできない
クンニはあきらめ、ずっと乳を触ったりなめたりしながら、会話を続ける。
「結婚しているんだっけ?」
「してますよ」
「ダンナも夜の仕事?」
「いや、昼の仕事。ずっと私は病院で働いていたんですよ。夜勤が多かったので、今もその仕事をしていることになってます」
「子どもはいないんだよね」
「いませんよ。いたら働けないですよね。欲しいけど、できないですよ。だって、セックスをしてないから。ここ何年も夫以外の人としかしてないですよ、ウフフフフ」
「浮気しているんだ」
「ここでするだけ」
いつから働いているのかについては、はっきりとは言おうとしない。素人を売りにした店で、「二年やっています」と言うわけにはいかないのだろうが、話しぶりからすると、そのくらいはやっていそう。
「もうそろそろ辞めようとは思っているんですけどね」
そう言っていたはずなのに、5年後いるのがこの世界。
もったいないからダメ
そうこうするうち、風呂が入り、私が湯に浸かっている間に、彼女はシャワーを浴びる。
ここはマットがなくて、スケベ椅子で体を洗ってくれるだけだ。
フェラのあと、キスをしてきた時にクリをいじる。強く抱きついてきて、声を出す。
「ねえ、早くベッドでしましょ」
クンニをすると、激しく身もだえし、指を入れて欲しがる。
指と舌で攻めているうちに、すぐにイキそうになっている。
「ダメダメ」
「もっとして」の意味かと思ったが、彼女は体を起こした。
「もったいないからダメです。こんなふうに攻めてくれる人っていないから、イケることって滅多にないんですよ。中に入ってきてからイキたい」
「二回イケばいい。ここでイッた方が入れてからがもっといいよ」
「絶対無理です。二回なんて絶対イケない。一日二回だってイッたことないのに、続けてなんて無理…アッ、ダメですって」
指の動きを再開したら、すぐに彼女はのけぞり、体を寝かせた。
「ダメダメ、ダメだったら。ああー、もうダメ、イク〜」
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