松沢呉一のビバノン・ライフ

性的嗜好と性格の一致と不一致—M女とM女タイプ[上]-[ビバノン循環湯 553] (松沢呉一)

これは16、7年前にポット出版のサイトでやっていた連載です。タラタラと思っていることを書いていた時期のものです。これで何日分かです。「マゾヒストたち」シリーズと内容が一部かぶってますので、あちらも参考にしてください。

 

 

M女タイプの性格

 

vivanon_sentence昔から言っていることなんですけど、M女タイプって苦手です。友だちとしても、エロの対象としてもです。「私って霊感が強いんですぅ」とか「よく金縛りになるんですぅ」と言いたがる女と同じくらい苦手。本当に霊感が強いんだったらいいんですけど、大半はそう言いたいだけです。霊感女とM女タイプって時に重複もするんですけど、これはたまたまではなく、両者は内面において通じているのだと思います。

誤解していただきたくないのですが、仕事としてM女をやっている女王様タイプもおりますし、仲のいいM女もいて、M女だからM女タイプとは限りません。仕事としてのM女、性的な嗜好としてのM女のすべてが嫌いというのでは全然なくて、「タイプとしてのM女」は苦手という話です。わかりにくいですね。

ここで言うM女タイプというのはウジウジしてはっきりしない女、無言電話をするような女、かまってやらないと手首を切る女、注目されたいがために虚言を言う女ということであり、私の仲のいいM女は、こういうタイプではありません。時々手首は切るとしても、はっきりとした性格です。

また、SMに関係のないM女タイプもいて、実際にSMが好きかどうかは問題ではありません。男にだってM女タイプがいて、これはストーカー・タイプにもダブりそうです。

したがって、M女がこういう性質を持つというよりも、いろんなところにいるこういうタイプをたまたま「M女タイプ」としているだけなんですけど、私の知る限り、こういうのがM女には多い傾向があります。

男のMにもこういう傾向がないわけではないのですが、男のMと女のMはきれいには重ならないものです。知り合いでも、ストレスのない職場に移ったら、SMをやる必然性がなくなったのがいるように、男のMは「ストレスM」の人がわりと多く、こういう人は社会との関係で初めて性的なM傾向を持ったり、強まったりするので、素の性格までがウジウジしているわけではなく、弁舌爽やかで、竹を割ったような性格のM男も少なくなかったりします。

警官や自衛官、あるいは会社員でも、下っ端のうちはSの客が多く、お偉いさんはMが多いともいいます。ぺこぺこしているうちは、その反動で攻撃的な欲望が出て、仕事で偉ぶっていると、行動規範をすべて女王様に委ねて解放されたくなるってことでしょう。

この場合、社会的に演じなければいけない自分と別の自分を設定することでバランスをとる方法がSMであるとも言い得ます。つまり、社会的役割によって男のSやMは作られるのです。あくまでそういう人たちもいる、って話ですけどね。

Vintage nudes – Opus 5 着色しました

 

 

表層の性格、深層の性格

 

vivanon_sentenceSMプレイとしてはMを好むのが、必ずしも性格的にMタイプとは限らないわけですが、逆に、本当はMなのに、それを認められずにSをやっている「反転S」の男に生来の性格としてのMタイプの人が多いような気もします。今でも男がMであるとは認められにくいところがあり、だからこそ、社会的な自分を捨てる場としてMに価値があるということにもなるのですが、自分を捨てる、自分をなくすことに価値を見いだすストレスMタイプではないMの人には、この抵抗感を拭い去れずにSをやることがけっこうあるんですね。人間は複雑なんです。

女の場合も、社会的に望ましい女、つまり、おしとやかで受動的な女を演じていることの反動で女王様をするケースがあります。「ストレス女王」とでも言いましょうか。

バリバリ仕事をやっているキャリアウーマン系で、見るからに女王様タイプなのに、性的にはMもいます。ただ、女の場合、社会的ストレスは「責任がある立場」「決定しなければならない立場」「人に頼られる立場」というだけではなく、そうなってもなお「女」を求められるというところに生じやすい傾向があるため、ストレス系は、男はMに、女はSに出やすい。社会的役割の逆に性的な欲望が向うわけです。

しかし、一般に、女の場合は、普段の表面的な性格と見た目、性的嗜好としてのSかMかが比較的一致している傾向があるように思います。女王様はやっぱり普段から女王様です。対して男は気弱な人に限って、職場ではマッチョな装いでガードして牽制し、プライベートでプレイになるとMになったりもします。見た目と中身と性的嗜好が錯綜しがちだったりするので、容易にはM男というタイプを同定しにくいのです。

その点、疑問のないM女タイプはけっこう普通に存在しています。表層と性にズレがないのです。女王様はふだんから女王様なのと対になってます。

 

 

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