松沢呉一のビバノン・ライフ

読書会で知り合って結婚したのが60組!!—猫町倶楽部初体験(1)-(松沢呉一)

猫町倶楽部での質問 [4]/今後の予定は適当—『マゾヒストたち』(16)」から続いているのですが、これ以降、『マゾヒストたち』とはあまり関係のない話が続くので、独立させました。

 

 

 

猫町倶楽部の恐るべきネットワーク

 

vivanon_sentence1月13日に開かれた猫町倶楽部の読書会は新鮮な驚きがあちこちにありました。

 

 

 

 

私の動員力は最大20人くらいと自分で見積もってます。パンディットでの「世界はマゾでできている」も満席になったのはゲストのおかげ。なのに、うんと広い阿佐ヶ谷ロフトでやると聞いて、「なにか誤解をしているのではないか。でも、私が損するわけではないのでまあいいか」と思ってました。

フタを開けてビックリですよ。読書会なので、テーブルを出すスペースを確保しなければならず、その状態の阿佐ヶ谷ロフトの定員(74名だったかな)に達したため、受付を打ち切ってます。参加費もこちらの方がうんと高かったにもかかわらず(3,000円。懇親会は4.000円)、あれだけゲストを揃えた「世界はマゾでできている」の2倍近く集まりました。大阪や名古屋から来た人はそれぞれ4人か5人いて、さらには愛媛から来た人もいました。暇か。

私やパンディットが告知して、SMバーなどでフライヤーを配布して届く範囲は知れていて、猫町倶楽部のネットワークの方がはるかに広いということがまずあるのですが、なおかつそのネットワークは強いのです。

 

 

本を媒介にしたコミュニティ

 

vivanon_sentence「この会はいったいなんなんだろう。こうも動員力があるのは宗教団体かマルチ商法の新手の勧誘方法に違いない」なんて考えつつ、猫町倶楽部を初体験して、その実体がよくわかりました。1度で全部わかるわけではないですが、1度だけでもわかることがあるってものです。

繰り返し参加していると、ゲストの話を聞く、内容について語ることと並び、「仲間たちに会って話す」というもうひとつの目的が生まれます。本を読むのは孤独な作業ですけど、「これを読むと皆に会える」という感覚になっていく。こうなると、さして本が好きではなかった人でも読書に張りが出ます。

「本を読んで成績を上げる」「本を読んで資格をとる」といったように目的が明確な読書もありますけど、とくに文学書では功利的な効果を実感できるわけではない。「心が豊かになる」なんて言っても豊かになったかどうかはなかなか自覚できない。結局のところ、「読書自体が好き」「読書自体が楽しい」ということが本を読むことの絶対的な動機になるわけですけど、ここにもうひとつの動機が加わったのが猫町倶楽部です。

これがたんなるトークイベントや講演会と決定的に違うところです。ゲストが客に向って一方通行で話をするのと違って、客同士が交錯する。それこそが人を集める理由です。

いい映画を見たあと、いいコンサートに行ったあと、人にそれを語りたくなりますし、他の人がどう思ったのか知りたくなります。映画やコンサートに一緒にいった人がいたら、「ちょっとお茶を飲んでいかない?」「一杯やっていかない?」ということになる。しかし、本はほとんどの場合、一人で読むので、誘う相手がいない。でも、猫町倶楽部があるぞと。

これまでも読書会はありましたし、若い時分に私も参加したことがありますが、複数で「本を読むことと、それを批評すること」というところに重きがありました。孤独である読書体験の共有化です。

それに対して、猫町倶楽部は本をネタにしたイベントをやること、その場を楽しむこと、本で人がつながること、ゲストをネタに参加者同士がつながることに重きがある印象でした。読書のイベント化、読書のコミュニティ化です。これまでの読書会にもその要素はあったのですが、それを見えやすくしています。

 

 

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