米国で社内恋愛禁止規定が一般化してきた背景—懲戒の基準[37]-(松沢呉一)
「マクドナルドCEO解任に見る社内恋愛禁止の論理—懲戒の基準[36]」の続きです。
※ここではすべての社員の社内恋愛・社内セックス・社内結婚の禁止に賛成していますが、撤回しました。詳しくは「「積極的合意」の会社版・職場の恋愛契約(lomance contract)—懲戒の基準[44]」を参照のこと。
社内恋愛・社内セックス・社内結婚禁止に賛成することにしました
今まで延々と書いてきたことを覆すようだし、実際、あちこち検討し直さなければならない点が出てきているのですが、前回確認した論理によって、社内恋愛禁止・社内セックス禁止・社内結婚禁止に私は賛成することにしました。
積極的に賛成していいのかどうかについてはなお迷いはあって、米国でもプライバシーの侵害であるという批判はあるそうですが、英語版BBCの記事によると、すでに米国では「社内恋愛禁止か、つきあう場合は会社に知らせるか、どちかかの方法をとるのが一般的になっている」と弁護士が語ってます。法的にも認められる規定になっているのだと思われます。
前回書いた論理を導入すれば、社内恋愛禁止が米国で進んでいることは私もスムーズに納得できます。
私は以前から仕事関係ではセックスしない方針です。仕事とセックスとどっちが大事かと言えば仕事ですし、仕事の時に面倒を抱えたくない。我慢するのではなくて、仕事モードになるとそんな気がまったく出てこない。セックスが仕事になったら別として。実際、そうしないと記事が書けないということになると、いつも以上にセックスに奮起したものです。
仕事をする編集者も私情を入れ込まない人の方ががいい。男であれ、女であれ、長く仕事をしていくうちに友だちみたいな関係になりますが、それでも仕事の関係という一線を引く人の方がいいのです。
仮に今から私がどっかの会社に入るとしても、そこでセックスしたり、恋愛したりはあり得ない。その私の感覚を皆さんが共有して、ルール化すればいいだけのことです。
だから、以前から「社会運動も恋愛禁止・セックス禁止にした方がいいのに」と冗談半分で言っていました。あまりに下半身トラブルが多いので。しかし、それを成立させる論理が見出せなかったため、「会社や団体、集団が個人の領域に介入すべきではないし、やりたい人にやめろとは言えない」と思っていました。それもここまで。
※マクドナルドCEO解任のニュースは世界的に大きく報じられています。上は英EveningExpress紙より
確実に社内恋愛禁止は拡大していく
マクドナルドの件について、今年になってから、米ウォールストリート・ジャーナルが注目の記事を出しています。
2020年1月5日付「THE WALL STREET JOURNAL」
マクドナルド社は、社内恋愛禁止規定があるにもかかわらず、なぜスティーヴ・イースターブルック(Steve Easterbrook)前CEOはあんなことになったのかを調査したところ、彼は酒とパーティが好きで、夜な夜な社員を引き連れて飲み歩いていたそうです。今までの常識で言えば、「話のわかるいい管理職」ってことですが、この際に女の社員といちゃつくこともあり、これが規定違反の始まりになったらしい。
そこで新しいCEOのクリス・ケンプチンスキー(Chris Kempczinski)は、この慣例をやめることにしたそうです。これをまた新たな規定にして禁止するとまでは書かれていないですが、いっそそうしちゃってもいいんじゃなかろうか。酒飲むと理性をなくす人が多いじゃないですか。理性を失うために飲む人たちもいそうだし。
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