松沢呉一のビバノン・ライフ

大澤昇平の差別発言で懲戒解雇にするルール改正は可能か—懲戒の基準[42]-(松沢呉一)

学外での差別発言だけで解雇することは不当—懲戒の基準[41]」の続きです。

 

 

 

民間企業では、社外での発言は戒告又は減給以下

 

vivanon_sentence素晴らしく便利なサイトを発見しました。「社長のための労働問題ブログ」です。非違行為ごとに裁判例が出ていて、「民間データ」「公務員データ」「報道データ」も出ています。これを見れば、ある行為をどう処分するのが標準的かすぐにわかります。ここに沿っておけば大きな失敗はなく、これがあれば私も懲戒する立場にいつでもなれます。

懲戒については、なんの根拠もない自分の感覚や感情だけで判断するのでなく、これを見て判断した方がいいと思います。

ここでも職場に直接関係のないインターネットの書き込み例はないのですが、職場に直接関係した内容の書き込みについては以下の裁判例が出ています。

 

 

うっすらとこの件は記憶にあるのですが、なんでしたっけね。まあいいや。

どういう内容のことをどの程度書いたのかわからないですが、繰り返し公開していたと思われて、取材源の秘匿に反し、社外秘扱いの事実の公開をし、服務規程違反をしていても出勤停止どまりです。停職ですから、決して軽くはないですけど。

以下が同じパターンの事例に対する民間データ。

 

 

いずれも業務上知り得た内容や会社を批判するような内容を外で書いたり、漏らしたりした事例と思われ、それでも解雇まで至る例は少ないであろうことがわかります(なぜ合計すると100%を超えるのかは不明ですが、他はそうなっていないので、おそらく誤記でしょう)。

直接業務に関係している内容でも、大半が軽い懲戒であり、直接職場と関係のない内容の場合はさらに軽い。戒告にも至らない注意程度、あるいはそれさえないのがほとんどであろうことが推測できます。

これを「軽すぎる」というのは制裁感情が暴走しているからです。繰り返してきたように、社外、学外の言動については軽くていいのです。

社員なり教員なりが酔っぱらってどっかの誰かと喧嘩して殴ったところで、解雇されてはならない。刑事事件化しても、暴行だけなら戒告程度でいい(社内に影響する人間関係だと減給もありとして。また、傷害だとワンランク重くなるとしても、酔って上司を殴って怪我をさせて懲戒解雇になった例では不当判決が出ていることが「社長のための労働問題ブログ」に取り上げられています。ホントに便利)。

社員なり教員なりがデモに出て公務執行妨害で逮捕されて、不起訴で釈放され、業務に支障がないなら、なんら処分されなくていいのです。

だから、私は今まで社内恋愛、社内セックスは、業務に支障がない限り、会社が介入してはならないと思っていたわけですが、これは仕事と私的領域を完全に分断するってことなので、矛盾がないのだとやっと気づきました。これは別項を参照のこと。

 

 

無闇に懲戒解雇を求める危険性

 

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それでも、大澤昇平の場合、好き好んで東大の名前を出して外向けに発言をしているのですから、酔っぱらって人を殴った話とはワケが違います。近隣に届くように、「オレは東大最年少准教授の大澤昇平だ」と拡声器で叫びながら殴ったようなものですから、大学が放置できないのは当然かとは思います。

税金で食ってますから、一般に公務員は民間企業の社員よりも懲戒が厳しい傾向があります。規定が細かく、かつ運用も厳密。また、教育者は会社員より厳しい部分があっていい。私立の大学よりも国公立の方が厳しくていい。

よって東大は厳しくていいのですけど、以上のことから、学外での差別発言については放置はできずとも、減給程度が妥当だろうと考えます。とうてい解雇にはできず、「認定された事実」の中では、もっとも軽度です。

その点、「認定された事実」の2と3については直接的に大学を貶めていることから、単体でも停職に至ってもいいのではないでしょうか。

 

 

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