松沢呉一のビバノン・ライフ

風俗嬢たちが曲をよく知っている理由—性風俗店のBGMを考察する[下]-[ビバノン循環湯 566]-(松沢呉一)

音楽と声の関係—性風俗店のBGMを考察する[中]」の続きです。

 

 

 

YMOを流すと客が増え、ミスチルを流すと客が減る?

 

vivanon_sentence渋谷のイメクラ「カリペロ」のスタッフで、仲のいいのがいるのだが、彼は今までいくつかのキャバクラや風俗店で働いてきた。

「以前いたキャバクラでは、ずーっとユーロビートでした。たまに聴くならいいけど、ずっと聴いていると頭がおかしくなってくるんですよ。それ以来、自分で曲を選べる時は絶対ユーロビートはかけない。ヘルスは落ち着いた曲の方がいいと思うんですよ。前いたイメクラでは、有線じゃなくて、CDをかけていたんですけど、自分でCDをもってきて、かけて欲しいというコもいました。コギャル系の店だったので、浜崎あゆみが多かったですね。僕の中では、客が来るCDと、来ないCDというのがあって、YMOをかけると客が来るけど、ミスチルを流すと客が減るというジンクスがあります(笑)」

有線があっても、CDを使っている店は多いものである。有線の難点は急に曲調が変わることだ。たとえばロック系のやかましい音が流れていて、それをいいことに、大きな声で「あー、気持ちいい~、イクーッ」なんて女のコが叫んでいたのに、次にバラード調の曲になって自分の声が響き渡り、でも、ひっこみがつかなくなって、恥かしがりながら声を出し続けるなんてことがある。

その点、CDであれば、全体のトーンを一定にすることができるから、そういう危険は少ない。とくに同じCDを何度も流していると、「次は静かな曲だから、その前にイッたフリをして声を抑えておこう」なんてことも考えられるし、「一周したからそろそろ50分だな。シャワーに行かなくちゃ」と時間配分の目安にも使える。

※C.Gilhousen「NUDE

 

 

風俗店で敬遠される演歌

 

vivanon_sentenceその従業員は以前上野のヘルスにいた。

「そこは有線だったんですけど、たいていリクエストのチャンネルでしたね。A-1のチャンネルです」

いろんな曲がかかるため、飽きこないのである。しかし、それが難点でもある。

「演歌もかかるじゃないですか。演歌が嫌いなコが多いので、すぐに“有線を替えてもらえますか”って女のコからクレームがつく。演歌がかかると、コールされる前にチャンネルを替えてましたね」

「風俗嬢は演歌が嫌い」とまでは言えなくて、ふだんは演歌ばかりを聴いていて、女心の悲しみで頬を濡らしていても、性風俗店ではあのテンポはやりにくく、歌詞が聴き取りやすいことも難点になるってこともありそうだ。

現在の「カリペロ」では、個室にも有線が入っていて、女のコがチャンネルを選んでいるため、皆が何を聴いているかは不明。

※C.Gilhousen「NUDE

 

 

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