松沢呉一のビバノン・ライフ

法律的にも文化的にも宗教的にも同性愛が許されない国—エチオピアについて知りたかったこと[4]-(松沢呉一)

レゲエのホモフォビアはエチオピアがルーツか?—エチオピアについて知りたかったこと[3]」の続きです。

 

 

 

法律的にも文化的にも宗教的にも同性愛はダメ

 

vivanon_sentenceリトル・エチオピア」のマスターに、レゲエからのアプローチをしようとしたのですが、うまく伝えられなくて、結局、私はストレートにこう聞きました。

「エチオピアでは同性愛はダメ?」

「ダメだよ。法律でもダメ、文化でもダメ、宗教でもダメ。私はクリスチャンだけど、キリスト教でもイスラムでもダメ。やっている人はいるだろうけど、見つかったら捕まる」

パシッとそう言われてしまって、それ以上は突っ込めませんでした。あの様子では、彼自身、その現実を支持しているようですから、しつこくすると怒り出しそうです。

私が確かめたいのは、それが歌に表現されているかどうかです。さすがにホモフォビアを歌っているとなると、言葉がわからなくても、「いい曲だなあ」なんて楽しむことはできない。楽しむとしてもこっそり一人でやるべきことで、そんな曲を人に勧めることはできない。

何度か通って歌詞の内容まで聞くしかないかと思っていたのですが、何度通ってもそこまで聞き出せない可能性もありそうで、ゲイの運動体に聞いた方が早そうです。

そこで、家に帰ってネットで検索したら、ゲエズ文字やエチオピア国旗とレインボー・フラッグが並ぶ画像がいくつか出てきたのですが、すべてエチオピア国外での活動です。欧米のプライドパレードにエチオピア人として参加しているのです。

そういった国外団体(団体になっているのかどうかもわからない)のひとつに問い合わせました。エチオピアではどの程度ホモフォビアが強く、音楽の中でも歌われているものがあるのかどうかと。

私の英語が通じなかったのか、ただ面倒だったのか、あるいは怪しまれたのか、返事はありませんでした。よくわからんメールは無視するのが自衛の賢い方法です。

※料理を入れる容器

 

 

エチオピアの星野源

 

vivanon_sentence後日、四ツ木にまた行きました。銭湯のついでです。

経営者夫婦はおらず、前回はいなかった従業員がいます。また、客にタコシェの中山さんがいて、互いにビックリ。彼女は葛飾区出身で、今も葛飾区に住んでいます。「リトル・エチオピア」は葛飾の名店か。

彼女は3人で来ており、閉店間際だったこともあって、客はそれだけ。

店に入った時にエスバルー・イタヨゥがかかってました。

 

 

 

この曲が私は好きです。MVも好き。

中山さんたちは先に帰り、私は彼に話しかけました。経営者夫婦に比べると、日本語は理解できないようで、言葉を噛み砕きながらの会話です。

 

 

民族が違うと読みもわからない

 

vivanon_sentenceすっぱいカレーを食べながら、まずはミュージシャンの読み方を教えてもらいました。

時々彼も読みがわからない名前があります。

「たぶんその人はアムハラではない」

たとえばジョテ・デレスです。曲を聴いてもらったのでなく、スペルを言っただけなので、別民族かどうかははっきりしないですが、彼もわからないので、読みは適当です。ジョテ・デレスとしか読めないかと思いますが。

 

 

 

 

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