和田アキ子の備蓄癖と私の備蓄癖はおそらく近い—ウイルスとウイルス恐怖症に覆われる世界[6]-(松沢呉一)
「コロナ暴動・コロナ乱闘・コロナ離婚—ウイルスとウイルス恐怖症に覆われる世界[5]」の続きです。
買い溜めしたい気持ちはイヤというほどわかる
「トイレットペーパーがなくなったらどうしよう」と不安になる気持ちは自体はよーくわかります。私もそうですから。だから常日頃備蓄をしています。
マスクの10枚入りパックを買ったのは、コロナウイルス騒ぎが始まってすぐで、まだナンボでも買えました。してみると、私は他の人たちよりも「なくなったらどうしよう」という不安が抜きん出て強いのかもしれない。嫌いなマスクを買うくらいに不安なのです。不安の先取り。そこまで不安を自覚していたわけでもないけれど、買うと安心。マスクをしなくても持っていると安心。
今はまだ10枚あるので安心が続いてます。嫌いだし、その必要がないので使ってないのですが、使って減ってくるとドキドキするので使いたくないということもあります。
印籠だって10回しか効力がないと、水戸黄門はもっと出し惜しみするはずです。毎週出していたらドラマが続かないので、月に1回出すか出さないか。
いつかこういうこともあろうかと、100枚入りのマスクの箱を買ったこともあるのですが、何年も使わなかったので捨ててしまいました。このタイミングで転売すればよかった(もともとあったものなので、静岡県議方式です)。
※ここ数日はどこの店にもトイレットペーパー、ティッシュペーパーとも入荷しています。これは先週の写真
備蓄行動の厄介さ
トイレットペーパーやティッシュペーパーもふだんから「なくなったらどうしよう」と不安になるため、つねにストックしているわけですが、これで不安が完全に解消されるわけでもなく、できることなら、3年くらい閉じ込められてもウンコをして鼻をかむのに困らないようにしたい。かさばるのでやらないだけだし、どんだけあっても不安は完全には解消されないので、ほどほどで抑えます。
私にとっての「ほどほど」は5箱入りのティッシュペーパーが5パックくらい、12個または18個入りのトイレットペーパーが3パックくらい未開封であることです。前者の方が多いのは、後者よりかさばらないためです。
日本人の平均でティッシュペーパーの消費量は年間平均17箱と言われています。もっと使っている気がしますが、これだけあれば1年もちます。
それを切ると不安に襲われます。今現在はなお確保できていますが、そろそろ危ない。買い占め行動はここが厄介なのです。「十分にある」という状態は存在せず、置けるスペースが決定しているだけです。
ふだんだったら未開封のパックがひとつあればいいのに、不安感が醸成されると数倍に膨らんでいきます。だから品不足が続いていきます。そこに私が乗らないで済んでいるのは「私のこの感覚は異常」という自覚があり、その自覚のもとでふだんから備蓄しているからであって、そこ以外は列に並ぶ人と同じです。私は並んでしまう人たちを笑うことができない。
※東京都のサイトに出ている防災用の備蓄品例
和田アキ子の発言で注目すべき点
こういった備蓄癖のある人たちでも、おそらくタイプはいろいろいて、公共の施設や企業がパックの米、缶詰、乾パン、水を備蓄しているのと同じ趣旨で、災害に備えて個人で備蓄している人もいるでしょうけど、それと私の備蓄は違います。今回の騒動のように、結果、役立つこともありますが、私は日常生活で物がなくなることが恐い。
ただの心配性とも違って、これはゆるい強迫観念なのです。
和田アキ子も備蓄癖があるようです。
2020年3月8日付「スポーツ報知」より
この発言に対しては視聴者からの反発もあったようです。「そんなことを言うと、備蓄する人が増えて、いよいよなくなる」と。そうかもしれんけど、こういう時に「備蓄すべし」と言わないと、どうせすぐに忘れますので、ありがたく拝聴しておけばいい。
ナチスの強制収容所と同じことが起きていますから、この反発の主たる中身は嫉妬です。商品がいくらでも買える時に自身が買い溜めたものですから、「和田アキ子は偉い」ってことのはずなのに、持たざる人々からすると、「私は芸能人なので、いつも使っているスーパーに電話すると、全部持ってきてくれる」と自慢しているかのように聞こえてしまいます。キーッ!
もし品不足が加速することを憂慮するなら、「マスクをしよう」と呼びかけている人にも注意しなきゃ。マスクにまったく意味がないわけではないので、呼びかけてもいいんですけどね。
で、ここでのチェックポイントは、備蓄しているものにシャンプーが入っていることです。
もし今大地震が来たとして、ガスも水道も遮断された時に必要なのはシャンプーか?
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