松沢呉一のビバノン・ライフ

不完全な方法ながら解決は個人で備蓄することしかない—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[15]-(松沢呉一)

どうすればパニック買いを防げるのか—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[14]」の続きです。

※トイレットペーパーについては「パニック買い」が落ち着いたタイミングを見計らって出し始めたのですが、小池百合子都知事の会見をきっかけに、また店頭から消えてしまいました。触れない方がいいのですが、ここで一区切りつくので、とっとと出します。これは数日前に書いてあったもので、再度の買い占めが起きたことを踏まえていないことをお断りします。

 

 

 情報面での改善は不可能

 

vivanon_sentence「情報」で言うと、まず「トイレットペーパーは中国で生産されている」という誤りを含んだツイートがありました。それを「デマ」だとして個人を晒して叩いた人々がいました。それを含めて、品不足になっていることを取り上げたメディアがありました。

これらはどれも改善できない。ツイートする前に、それが本当であるのかどうかを検索して確認してからツイートすればいいわけですが、それで反応があることが自己承認欲求になる人たちは、早く出すことが必須であって、事実かどうかは重要ではありませんから、確認作業に手間などかけない。いつものこと。

こういう人たちに「リテラシーを」「書き込む前にひと呼吸」などといくら言っても変わらないのです。パニック時はとくにそうでしょう。

仮に手間をかけて正確なことを踏まえてトイレットペーパー不足を予想するツイート出していても、買い占めに走った人たちはいて、トイレットペーパーは店頭から消えたに違いないのですから、正確なことを書けるようになっても事態は好転しません。

これを「デマ」だとして吊るし上げた人たちも、スケープゴートを見出し、それを叩くことで溜飲を下げ、問題が解決したと思い込む行動様式は変わらない。調べること、考えることができないのですから、この点では「デマ」とされるツイートをした人と同類なのです。

人が死ぬわけでもあるまいし、メディアが一切報道しないという判断はありですけど、面白いので報道しますわね。メディアまでが「デマ」と決めつけたのはどうかと思いますが、テレビも新聞もそんなもん。いちいち考えることはしない。また、報道も、ここで正確なことを報じたところで、パニックは起きたでしょう。

その背景にある恐怖や不安を煽り立てたのはメディアですが、現実をそのまま伝えたら恐怖や不安は高まるのは必然であって、それを抑制しようとすると報道の統制になります。中国以外ではそんなことはできない。

※2020年3月4日付「BUSSINESS NEWS AUSTRALIA」 前々回の写真と同じ時に撮影したものでしょう。緊張を高める写真より、笑いを込めた写真の方が緊張感をゆるめて、パニックになりにくいと思います。

 

 

デマを罰したところで解決にはならない

 

vivanon_sentence日本でも、台湾のように逮捕して罰金刑にすればいいと主張する人たちが湧いてますけど、今回のケースについてはなんの改善にもなりません。正しいことを書いても同じことになった可能性が高いのですから。

また、何をもって「デマ」と認定するのか。仮にこのような法を制定するとしても、「デマ」の定義を相当に厳密にしないと、ほとんどの人はついうっかりで逮捕されてしまいます。騒動を起こすことを意図して虚偽の事実を書いたことを罰するというのならわかりますが、今回のツイートはそれとは違い、ただの事実誤認です。

騒動を引き起こしただけで刑事罰になるのだったら、デマとして叩いた人たちも刑事罰が相応しい。彼らもまたパニックを作り出したのですから。メディアも同様です。どうして自分らは間違うことがないと確信できるのかわからんよ。

台湾ではデマを罰する法律がすでにあったにもかかわらず、トイレットペーパーの買い占めは引き起こされました。効果がなかったわけです。だから、さらに重罰化するって話もあるようですが、これはナチスの発想。法で罰すれば解決すると考える。解決しないと重罰化する。これによって守れない法が増えていき、いつでも誰でも逮捕できる社会の到来です。

 

 

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