松沢呉一のビバノン・ライフ

南アフリカの現在—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[18]-(松沢呉一)

アフリカ諸国への疑問—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[17]の続きです。

※昨日公表の数字で南アフリカの死亡者が1名増えて3名になって、致死率も上がりましたが、直すのが面倒なので、前回使った数字を「3月30日現在の数字」として以降も使います。

また、前回、感染者ゼロの国として挙げたボツワナで、昨日、初の感染者が出たことが発表されています。3人の感染者はいずれも旅行者とのことで、国内感染はなおゼロです。あと4カ国か5カ国感染者が出ていない国があるはずです。

 

 

南アフリカで起きていること

 

vivanon_sentence南アフリカでは3月26日の深夜から、21日間の厳重なロックダウン措置がとられています。

多数報道され、動画も観られますが、昨日出ていた以下の記事に注目しました。

 

2020年3月31日付「THE CONVERSATION

 

 

南アでは生活必需品を買う以外のすべての外出を禁止。経済活動は完全にストップし、ジョギングも犬の散歩も禁止。酒とタバコは生活必需品とは見なされず、販売は禁止され、備蓄してあるものを飲んだり、吸ったりできても、実質的な禁酒・禁煙政策です。わかりにくいですが、写真はタバコを吸っている様子のようです。

経済的に破綻し、国民の自由は奪われ、これによって家庭内暴力などの犯罪が激化する。健康を損ない、病気が進行し、精神を害するなど、公衆衛生の立場から見ても意味がなく、害の方が大きいと批判する記事です。

コロナウイルスを撲滅できるなら、国民が心身の健康を害してもかまわないのがこの対策ってわけです。

著者のBenjamin T H SmartAlex Broadbentはヨハネスブルグ大学の研究者です。しかし、おそらくこういう意見は通りにくい。世界各国で、強権的な措置を望み、強い政府を求める人々が増大しています。

コロナウイルスとの闘いはしばしば戦争に喩えられます。戦時にはそうなるように、国民がそれを望んでいます。「緊急時なのだから」として、敵をやっつけるためにはあっさり経済も自由も権利も民主主義も放棄して管理されたがり、管理されたがらない国民をバッシングする。各国政府はそういう人たちに引っ張られています。もはや「それがなんのためなのか」を問うこともしない。

治療薬やワクチンができない限り、やっつけられる敵じゃねえって。しかし、闘うことが善とされていて、すべての上位に置かれるようになってます。

 

 

買い出し客にゴム弾を使う南ア

 

vivanon_sentence当然、南アでは、ストレスが極限に達して、買い出しのために店に殺到。その群集に対して警察がゴム弾を発射する騒ぎになっています。

 

 

※2020年3月28日付「AFP BB NEWS」より

 

これが望ましい社会か? これが4月16日まで続きます。そのうち暴動が起きるぞ。

「もっと距離をあけろ」と言うためにゴム弾を発射しなくていいだろうにと思うのですけど、こんな騒動になるんだったら、集団免疫作戦を実施した方がよくないか? 南アは、アフリカの中でもっとも感染者が多いのですが、思い切り死者数が少ないんだから、そんなに無理することないって。感染者の0.18パーセントしか死んでいない事実を直視すべきです。

ウガンダも南アに続いてロックダウンを始めたとの報道もありますが、ウガンダなんて感染者はまだ二桁で、死者は出ていないんですよ。

 

 

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