感染者の年齢が下がっている理由—健康な若い世代はほとんど死なない病気[2]-(松沢呉一)
「陰謀論にすがる前に検索を—健康な若い世代はCOVID-19ではほとんど死なない[1]」の続きです。
4月8日、東京都ではこれまで最大の144名の感染が確認されていますが、この内訳がまだ発表されていないので、ここでは7日発表の数値を使用しています。
コミュニティの助け合いと抑制
こういう状況では、さまざまなコミュニティ内で助け合いがなされます。同時にコミュニティが抑制もします。
たとえばどこかの商店街で「なんの補償もにないのに、店を閉じるわけにはいかない。強制力はないのだから、うちは営業を続ける」という頑固オヤジがいたとしても、商店会から「あんたがそうすることによって、商店街全体がそう見られる」「もしおたくから感染者が出たら、他の店にも迷惑がかかる」とプレッシャーがかかります。近隣の店主らから直接言われるかもしれず、客から言われるかもしれない。
実際にそういう横槍が入る以前に、横槍が入るだろうことを予測して自分を抑制する。自分が抑制すると、「オレだって我慢しているんだから」と抑制しない人に口を出したくなる。
不安が広がると、個の判断ができにくくなって、集団に従いやすくなるわけです。この心理が「パニック買い」にもつながります。
ちなみに今回の非常事態宣言においては、「明日発表」となった月曜日の夜に品薄が起きてましたが、翌日には補充が終わって、ほぼ平常通りに見えました。トイレットペーパーやティッシュペーパーも豊富にあって、インスタント食品などが一部品薄になっていただけでした。店側は準備をしていたのかもしれない。
※7日にゴールデン街で撮った写真なのですが、あとで見たらマスクをした母娘らしき2人が写っていました。深夜12時近くだったはずです。そんな母娘がいた記憶はない。と別の意味で怖い写真ですけど、数は少ないとは言え、あの辺に住んでいる人たちはいますから、夜の散歩でしょう。
時間が経つにつれて若い世代の感染者率が高まる事情
7日の夜に歌舞伎町めぐりをしていて、意外に思ったことがあります。イメージとして、歌舞伎町の飲み屋では感染者が続出していそうじゃないですか。私の周りでもすでに感染者や感染が濃厚な人が複数いるくらいで、いないはずがないと私は思っていました。
実際にはいないとしても、「あの店で出た」といった噂が駆け巡っていそうですが、ひとつも聞けませんでした(歌舞伎町の店については)。たまたまかもしれないけれど、たぶんここにもコミュニティが守り合うことの強い抑制が働いていそうです。知っていても下手なことは言わない。
「感染しても保健所にどこで感染したのかは言わない人が多いのではないか」という話が出ていて、間違いなくこの心理も働きます。とくに馴染みの店では、感染した確率が高いと思っても、言わない。自分が言うことで営業停止になると迷惑だと思って言わないし、騒動が終わってから出入り出来なくなることを怖れて言わない。感染して自主隔離したり、入院したりして、店にも行きませんから、店も気づかない。
感染経路が不明の人が増えている事情はいくつかありそうですが、わかっていても言わない人が増えている可能性があって、騒動が一段落したら、「実はあの時〜」という話が次々と出てきそうです。
そのことを示唆するデータがあります。
2020年4月1日「FNN PRIME」
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない東京都で、特に若い世代の感染者が増加していることがわかった。
東京都の感染者の発表を年代別に見ると、これまでで最も多い78人の感染が確認された3月31日は、50代以上が24人だったのに対して、40代以下は、その2倍以上の54人に達した。
直近の5日間では、50代以上が98人に対して、40代以下は164人と、全体のおよそ63%を占めていて、若い世代の感染者が目立っているのがわかる。
この傾向について、東京都の担当者は、「検査の重要性が広まり、検査を受ける若者が増えたのかもしれない。一方で、若い人たちの間で感染が拡大しているとの懸念もある」としている。
簡単に「ウイルスが変異を起こして強力になっている」なんて思わないように。変異が起きる可能性はあるにしても、その場合は若い世代の重症化率や致死率が上がるはずで、そうなっているようには見えないため、別の事情です。
そもそも40代までを「若い世代」「若年層」とするのはどんなもんかと思うのだけれど、比較として上より若いという意味として、しばしばこういう区分と名称が使われていますし、実際20代も増えてますので。ここは目をつぶるとして、数字を見てその理由を考えてみましょう。
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