松沢呉一のビバノン・ライフ

肥大した恐怖からそろそろ抜けませんか—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[27]-(松沢呉一)

日本はスウェーデンから学べるか?—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[26]」の続きです。

 

 

年間10万人が肺炎で亡くなっている

 

vivanon_sentenceふと昨日思いました。例年、肺炎で亡くなる人はどのくらいいるんだろうと。よく米国のインフルエンザの死亡者数と比較している記事はありますが、日本国内の肺炎による死亡者数はどのくらいなのか。これもとっくに調べている人たちがいるでしょうが、私も確認してみました。

最新のものが見つからず、以下は平成28年(2016)と29年(2017)の数字。

 

 

ざっと年間10万人。この肺炎にはインフルエンザ等によるものを含んでいるのだと思います。

3位から5位の脳血管疾患老衰肺炎は数字が拮抗していて、年によっては肺炎が3位です。

肺炎による死者は、あるいはガンでも脳血管疾患でも、日々、「昨日は何人亡くなりました。今日は何人亡くなるでしょう」と報じられるわけではないですから、その数字を実感することは稀で、「肺炎、こえー」と実感することも稀ですけど、いっぱい死んでますね。

この中の不慮の事故は交通事故を含むのでしょう。よく「交通事故で年間これだけ亡くなっているのだから」といったように比較として交通事故はよく持ち出されますが、自動車はそれによるメリットをほとんどの人が受けていますし、しばしば加害・被害の関係で生じますから、病気と比較するのは無理があります。病気と比較するなら病気です。

 

 

日本国内のCOVID-19の死亡者は肺炎の死亡者1日分

 

vivanon_sentenceCOVID-19による死者は最初の死者が出てから2ヶ月半ほどで300人ほどです。肺炎による死者の1日分です。COVID-19による死も直接には肺炎であって、このまま死者が増え続けて、年間1万人に達したところで、「肺炎による死者が1割増」ってことです。

一部のメディアが報じているように、若い世代がCOVID-19でバタバタと死んでいっている事実はニューヨークでも東京でもありませんので、年齢構成も男女比も肺炎全般と近い。

 

三木誠/渡辺彰「死亡率からみえてくる呼吸器科医の現状と未来」より

 

これは10万人当たりの死亡率です。わずかですが、肺炎でも若者は死んでます。

では、インフルエンザも見てみましょう。データが古いですが、平成22年(2010年)の1月から3月までのインフルエンザによる年齢別死亡者です。インフルエンザの死亡者のほとんどはこの3ヶ月に集中します。

 

厚労省「日本におけるインフルエンザ A (H1N1) の死亡者の年齢別内訳/死亡例まとめ(平成22年3月30日現在)

 

インフルエンザに感染しても肺炎で亡くなるとは限らないため、肺炎の死亡者にこれらの人たちのすべてがカウントされているわけではありません。

7人強に1人は入院せずに亡くなっています。90代ともなると、延命治療は不要と判断し、家で死にたい人も多いでしょう。本人なり家族なりの希望でインフルエンザに罹っても入院しないで死んでいくことが容認されているであろうことがわかります。家族もインフルエンザに感染することもあるので気をつけた方がいいけれど、それでいいのです。治療薬のあるインフルエンザでも入院しなくていい。まして重症化しない人たちは家で治せばいい。

これを見ると、COVID-19より、基礎疾患がない(あるいは不明)の若い世代の死亡が多いことに気づきます。なんでメディアは若い世代を叩いたり、脅したりしないんですかね。そうすることは社会全体の損失になるからでしょう。だったらCOVID-19でもそうしましょうよ。そろそろ目を覚ましませんか。

 

 

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