松沢呉一のビバノン・ライフ

ロシアへの疑問—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[20]-(松沢呉一)

アフリカにおける集団免疫作戦の可能性—新型肺炎(COVID-19)について触れにくい事情[19]」の続きです。

 

 

 

ロシアは数字を操作しているのか?

 

vivanon_sentenceこのシリーズは間が空いてしまいましたが、まだ続きます。

私がずっとひっかかっていたのはロシアです。ロシアの人口は1億4,600万人です。しかも、中国との関係が強いはずなのに、3月末まで感染者は2千人台で、死亡者は一桁でした。3月25日まではゼロだったはずです。どういうこと?

その時点で、ロシアの人口の3割から6割に過ぎないイタリア、スペイン、フランス、ドイツの感染者数は万に達していました。しかし、東ヨーロッパになると大きく数値が落ちて、チェコが千人を超えていたのが最大で、あとは千人以下となっていて、きれいに西ヨーロッパから遠ざかるほど感染者数が落ちます。

この流れで言うと半分アジア所属のロシアが少ないのは当然ですが、中国との距離と関係からして、この数字で留まっている事情が私にはさっぱりわかりませんでした。

これについても英文の記事がいくつか出ています。

 

2020年3月20日付「salon

 

この記事の結論は、「時間が経たないとわからない」ってことです。

わからないなりに可能性は大きくふたつ示されていて、ひとつは「国境管理が厳密なため、国外からの移入をうまく防止できている」、もうひとつは「スクリーニングの欠陥、あるいは報告の欠陥」です。数字が間違っている、あるいは隠している可能性です。

 

 

COVID-19の死者をただの肺炎で処理している説

 

vivanon_sentenceこれに続いてCNNの記事が出ます。

 

2020年3月21日付「CNN

 

ルクセンブルクより感染者が少ないのはどういうわけかという疑問です。ルクセンブルクの人口は61万人ですから、ロシアの感染者はその100倍いてもいいわけです。

この記事でも、上のふたつの理由を取り上げています。前者の点では、1月の段階で中国との国境を封鎖し、2月に入ってから中国や韓国からの入国者を隔離して検閲するという厳しい措置をとっています。

そのため、感染経路の多くはイタリアからであり、距離から感染に時間差が生じたとも言えます。

感染者数や死者をごまかしている疑惑については、ただの肺炎として処理をしているのだとの説が出ています。それに対してロシア保健局は、肺炎に罹った患者はすべて検査をしていると否定しています。そうであるなら数字を検討すればわかることですから、誰かがおかしな数値を発見するでしょう。

ロシアでは早くから検査を多数実施して、その経路を断ったとも、社会的距離を早くから実施したとも言っています。

この疑問の答えはすでにほぼ出ています。

 

 

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